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石田明生

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雪の日
1月23日(水)雪

 払暁、まだ床にあって聞こえたのはカラスの鳴き声だった。夕べの天気予報によると、今朝は朝から雪ということだったので、うっすらと雪化粧をした街にかまびすしい鳴き声をたてた小鳥たちが飛び交うさまを想像していたので、少々がっかりという目覚めだった。
 起き出して窓から外を見ると、やはり雪はなく、黒々とした街があるだけだった。
 やっと朝食をとっている頃から、雪は降り出した。小さな庭にも、餌台にも雪は積もる。少しずつ心が洗われるようだ。

雪景色
今日に庭に現れたのは三毛猫が一匹、
彼(女)はガラス戸越しにじっと僕を見つめた後、つまらなそうに去って行った。



 今部屋でこれを書きながら、音楽を聞いている。いや逆か。音楽を聞きながら、これを書いている、と言った方がいいのか。フランス語の文法でよく問題になる「ジェロンディフ」という用法だ。例えば、

1. Je marche en mangeant. (食べながら、歩く)
2. Je mange en marchant. (歩きながら、食べる)

という表現がある場合、1.は歩く方が主で食べる方が従になると、かつて教わったことがある。だから、2.は食べるのが主ということになる。
 今の状態は、書くのが主だから、「音楽を聞きながら、書く(アクサン記号が出ないのでフランス語は省略)」ということか。窓外ではさらさらと雪が降り、室内ではユッスー・ンドール(ドゥール) Youssou N’Dour (1959生)の音楽が流れる。曲名も歌手も選んだわけではない。ただ、先日止めたままのMDをかけただけだ。雪の降る日に、雪とはまったく縁のないンドールとは、不思議な気がするが、悪くない。シェリフ・エムボー Cherif M’baw もそうだが、不思議なリズムに合わせて高い声でフレーズを歌う。よほど詩が大切なのだろうか、丁寧に詩句を口ずさむ。残念ながら、詩の内容は二人ともフランス語で歌っていないのでわからない。きっと「雪」なんて単語は出て来ないだろうな(シェリフの歌詞カードにはフランス語の対訳がある。読むともちろん「雪」という語はない。それどころか、自然現象を題材とした歌はない。主題はあくまで人間の世界だ)。二人ともセネガル出身の歌手だ。
 シェリフは、何年か前にNHKの『地球に乾杯・・・メトロミュージシャン』という番組で知った。これはパリのメトロで音楽活動をしているミュージシャンたちを取材したもので、優れものだ。僕は授業で学生たちによく見せて、感想文を書かせるが、彼らのカルチャー・ショックが手にとるようにわかる。自由の国フランスの自由な音楽活動が目の当たりにできるからだ。何年か前から、メトロ構内で演奏するにはオーディションを受けなければならなくなったらしい。番組は、その様子から始まる。ナレーターによると、合格者は年間三百組だそうだ。
 その中で、メトロミュージシャンからプロになった音楽家として紹介されているのが、シェリフ・エムボーだ。彼がレコード会社との契約からメトロで演奏できなくなるというので、メトロ時代のファンたちが彼のサヨナラ公演を開催するシーンがある。コンサートの場所もなかなかしゃれている。メトロの公団が協力してホームで行われたのだ。たった2・3分のシーンだったが、歌うシェリフの姿も声ももちろんだが、プラットホームで身体を揺すりながら聞く聴衆の静かな「のり」も忘れがたい。
 だから、パリのBHVのCD売り場で彼のアルバムを見つけたときは感動的だった。『明日 Demain』というタイトルがついていた。今では我が家のBGMのレパートリーに入っている。

シェリフ
シェリフのアルバム『明日 Demain』の表紙

 ユッスーを初めて知ったのは、『キリク Kirikou と魔女』というアニメ映画の主題曲からだった。フランス語の歌詞をまったりしたメロディーで歌うこの曲は彼の作曲だった(歌い手は別)。「キリクは友達」と、繰り返される、何の変哲もない歌詞なのだが、一度聞いただけで妙に耳の底に残るメロディーだった。西アフリカの民話を元に作られた映画もアニメながら不思議なリアリティーと場面の力強さを併せ持つ作品だった。

 昼食後も雪は降り続けている。室内の音楽は南のアフリカンから北の曲に変更した。同僚の音楽の先生がお薦めの『Musiques d’Erik Satie, Musiques du Moulin Rouge』というCDだ。エリック・サティーはもちろんだが、プーランク、ヴェイユ、ドゥビュッシーなどが一堂に会したまさに世紀末の世界だ。ピアノは寺嶋陸也、メゾソプラノが野々下由香里という方だ。彼女のフランス語の響きが心地よい。雪の日、ストーブをたいた暖かい部屋でひとり聞いている。
 さて、昨日の試験の採点でもしようか。それとも「数独」に挑戦するか。今我が家は数独がはやっている。
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ポップ・フランセ | 14:22:12 | Trackback(0) | Comments(0)
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