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石田明生

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BGM・・・ささやかな愉しみ
 今歯医者さんに通っている。だいぶ前からだ。そのためだろう、歯科技工士というのだろうか、そこの女性と話をするようになった。僕がフランス関係で生活の糧を稼いでいるのを知っているので、畢竟、フランス話になる。そんな話の流れから、たまたまサルコジ大統領の恋人の話題になった。
 「えっ、その人を知っているのですか?」
 「知っていると言っても、彼女のCDとDVDを持っているだけですよ。でもずいぶん前から知っています。2004年には日本に来ましたからね。あっ、そうだ。いつもBGMが流れていますが、彼女の曲にしたらいかがですか。つぶやくように歌っていますから、きっと合っていますよ」


 次の予約の日、カルラ・ブルーニのアルバムをMDに入れて持って行ったのは言うまでもない。受付で渡すと、彼女はさっそくBGMで流してくれた・・・
 こうして、東京郊外のしがない街にある歯医者さんでカルラ・ブルーニの曲が流れることになった。順番待ちをしている、おじいちゃん、おばあちゃんはもちろん、お兄さんやお姉さんも、耳に心地よく流れ込むメロディーが、元スーパーモデルにして、フランス大統領の恋人によって作られ、歌われているとは思わないだろう。
 ところがこのアルバム、40分もない、短いアルバムなので、同じ曲が聞こえて来ると、順番待ちの長さをつくづく実感してしまう(知らない人は同じ曲に気付いた時、1時間以上経ったと思うかもしれない)。そこで、次の予約のときに、マリー(ボサノバ・・・僕のお気に入り)、エレーヌ・セガラ、エンゾ・エンゾ、イリプシメを一枚のMDに入れて持って行った。これなら4時間は持つ。受付で渡すと、また彼女はそれをBGMで流してくれた。
 こうして、東京郊外のしがない街にある歯医者さんで、フランス語の歌が、しかもまさに現役の(懐メロではない)女性歌手たちの美しい声で流されることになったのだ。僕の独りよがりの思い込みだが、こんなしゃれた曲をBGMに使っている歯医者さんはそうざらにはないだろう。あるとすれば、センスのいいクラシック音楽の流れる歯医者さんか。
 クラシックと言えば、実は、次にエリック・サティーを持って行こうかどうか迷っている。あの待合室でサティーのピアノ曲が流れていたら、そう思うとぞくぞくする。だが、しつこくMDを持ち込む愚は犯すまい。いやがられるのが落ちだろう。
 さて今度の予約の日(2月1日)、はたして僕の選んだシャンソンが待合室の中で流れているだろうか。歯医者さんに行くのがちょっと楽しくなった。

注) Maryの曲『リオの雨 Il pleut sur Rio』は次のURLをクリックすると聴くことができます。
http://jp.youtube.com/watch?v=0Hl9jrzb1xA

 BGMと言えば、先日新宿の紀伊国屋書店に行ったときだった。店内で本を物色していると、軽いクラシック音楽、イージーリスニング風のクラシックが流れている中に、かすかに鳥のさえずりが聞こえるのに気付いた。気のせいだろうか、立つ位置によって鳥の鳴き声の大きさにむらがあるように思える。びっくりして、というのもこういう店の中でも視覚障害者用に鳥のさえずり音があるのかと思い、近くにいた店員に訊ねた。
 「すみません。ちょっとお聞きしたいのですが、鳥のさえずりが聞こえますよね。これは何のためなんですか?」
 まさか「鳥のさえずり」のことを聞かれるとは夢にも思っていなかったであろう店員さん、最初はぽかんとしていたが、
 「ああ、BGMです。こういう曲なんです」
 「鳥の鳴き声の入っている?」
 「ええ、そうです(お客さん、何でこんなこと訊くの、そんな顔つき)」
 「何という曲ですか(僕は少しむっとして)」
 「知りません(知らないことを恥じる様子がない)」

 この問答の後、前回で書いたように、7階のサザンシアターに行き、『選択』を観劇した。観劇後、また本屋に寄り、本を見て歩く。するとまた、鳥のさえずりが聞こえるではないか。さっきの問答から約3時間後だ。まさか同じ曲ではあるまい。
 そこで、近くにいた店員さんにまたまた聞いてみた。
 「すみません・・・(略)・・・」
 「BGMです。BGMの曲ですから」
 「なんて曲ですか」
 「知りません(さっきよりつれない感じ)」
 相手の店員さんを見ると、どうもさっきと同じ人のようだ。僕を見ながらあきれかえった様子をしている。それはそうだろう。ハンチング帽子をかぶったおじさんから、3時間の間をおいて「鳥のさえずり」のことを訊かれたのだから。この帽子のためにきっと両方とも僕だとわかっただろう。
 あとで彼は、休憩時間か勤務後、同僚の誰かに「さえずりおじさん」のことを話しているかもしれない。「今日変なおじさんがいたんだ。そのおじさん、鳥のさえずりに異常に反応していたよ。あれは一種のパラノイアだね」
 その同僚の中に女性店員がいて、もしこう言ったら、もっと話が盛り上がるかも・・・「ええっ! 私も同じこと訊かれたわ。そのおじさん、ハンチングかぶってたでしょ。同じ同じ。あのおじさん、いろいろな所で訊いて歩いてんだわ」
 その女性店員の言っていることは本当だ。実は、つれなくBGMだと言われ、しかも同じ店員だったのではないかという疑問が生じたので、階を変えて、あらためて女性店員に訊いてみたのだ。結果は同じだった。
 大きな書店のBGMは、いかに客がリラックスして店内で書に親しめるか、研究に研究を重ねて作られたものなのだろう。その結果として鳥のさえずりが軽いクラシック音楽と相乗効果を生み出し、脳になんとか波を伝えるのかもしれない。だから、紀伊国屋書店の店内では一日中、鳥のさえずりが聞こえるのだろう。
 我が歯医者さんのBGMも負けずに、となると、やはりエリック・サティーしかないかな。でもやめておこう。紀伊国屋では「さえずりおじさん」になってしまった。歯医者さんでは「お節介おじさん」にならないようにしよう。
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日常スケッチ | 23:58:04 | Trackback(0) | Comments(0)
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