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外来語こぼれ話(2)・・・イ短調 対 Am 対 La m
 それではフランス語から日本語になった外来語はどんなものがあるだろうか。この問いかけを時々学生たちにすることがある。すると、かえって来る答えはだいたい最近入ってきた新米外来語に限られる。たとえば、「パティシエ」「コンシエルジュ」「ショコラ」などなどだ。このような新参ものの外来語は以前からあった外来語と壮絶な戦いをする場合がある。


 チョコレートとショコラの場合、まだそうとう前者の方が勢力を維持しているが、パン屋さんを意味する「ベーカリー」と「ブーランジュリー(またはブーランジェ)」はどうだろうか。「ビアーホール」と「ブラッスリー」、「ジャンパー」と「ブルゾン」は。反対に、かつてフランス語だったが英語に破れたものに「ランデ・ヴー」や「アベック」がある。「デート」や「カップル」全盛時代の今これらの外来語を使う人はいないだろう。

RIMG0036.jpg

パン屋さんの隣に、こんな立て札が・・・
普通なら「ティーサロン」か「サロン・ド・テ」なのだろうが、「ブラッスリー」と書いてあった。隣のメニューを見たら、ビールが載っていなかったので、思わず訊いてしまった。
「ビールはないんですか?」
「奥のメニューに書いてあります』
残念、ここに「ビールのないブラッスリー、出現!」と書こうと思ったのに。

 では、新米外来語ではないフランス語からの日本語にどのような言葉があるだろうか。思いつくままに挙げてみよう。
 バリカン(フランスの社名 Bariquand & Marre から)、ズボン(スカートの下につけるペチコート jupon がなまったもの)、コロッケ(croquette がなまったもの)、マダム(madame)、ベテラン(vétéran ラテン語とフランス語が同語)、ゲートル(guêtres)、メートル(mètre)、リットル(litre)、グラム(gramme)、クーデター (coup d’Etat)、コミュニケ(communiqué 国際会議などの公式発表)、デタント(détente 緊張緩和)、コミュニスト(communiste)、(プチ)ブルジョワ(petit-bourgeois)、プロレタリア(prolétariat)、ルネッサンス(renaissance)、デビュー(début)、アンケート(enquête)、ジャンル(genre)、アンコール(encore)、ピケ(piqué)、サボタージュ(sabotage 「さぼる」)、シュミーズ(chemise ただしフランスではワイシャツのこと)、パンタロン(pantalon フランスではズボンのこと)、マント(manteau)、シャッポ(chapeau)、バレエ(ballet)、クラリネット(clarinette)、レストラン(restaurant)、タブロー(tableau)、パレット(palette)、モンタージュ(montage)、グラタン (gratin)、エクレア(éclair 「いなずま」のなまり)、クロワッサン(croissant 「三日月」の意味)、シュー・クリーム(chou à la crème のなまり)、パフェ(parfait 生クリーム菓子)、アラカルト(à la carte)、アラモード(à la mode)、オートクチュール(haute couture)、プレタポルテ(prêt-à-porter)、ブティック(boutique)、キュービスム(cubisme)、フォービスム (fauvisme)、ロマネスク(romaneaque)、ロマン(roman 「小説」「物語」の意味)、デッサン(dessin)、コラージュ(collage)、リトグラフ(lithographe)・・・
 この辺にしておこう。きりがないほど入り込んでいるはずだ。料理、ファッション、美術用語にあってはおびただしい数のフランス語が入っているのは、誰でも首肯できるかもしれないが、ベテラン、ゲートルのような軍隊用語があるのを奇異に感じられる人があるかもしれない。これは、日本の旧陸軍が軍隊の近代化の過程でフランス陸軍を模範としたことに由来する。だから、陸軍が扱う大砲の口径は「サンチ centi」で表された。たとえば「20サンチ砲」と言う。対して海軍はイギリスを範としたためだろうか、「インチ」を単位としている。このことは、上にも挙げた「メートル、グラム」などの単位がフランス語であることと関連する。
 ご存知のように、フランスは地球の4千万分の1を1メートルとする、いわゆるメートル法を作った(1895年)が、それがちょうど革命時代で敵国だったためだろうか、それとも提案した振り子方式が採用されなかったせいか、イギリスはメートル条約を締約していない(このデータは1983年なので、現在はわからない。ご存知の方がいたら、教えてほしい。今だメートル法を使っていないのは確かだ)。
 メートル法を採用した日本の場合(日本のメートル法の条約締約は意外に古く、1885年だ)、この度量衡の問題は、複雑を極めることとなったことはおわかりだろう。製品やスポーツがヨーロッパ系かアメリカ・イギリス系かで、サイズや距離の単位が違うから始末悪い。日本人は、一方でインチ(テレビなど)、ヤード(ゴルフなど)、オンス(ステーキ屋・・・いまはメートル法の方が多いか)など、英語圏の単位を用い、他方で、グラム、リットル、センチなどメートル法を使い分ける。それどころか、まだ尺貫法を使うこともある。たとえば、「うちの土地は40坪だ」のように。
 日本人特有かもしれない、この複数の外来語と日本語の使い分けという高等技術は、音楽の楽譜にも生かされている。音階の呼び方は、フランスやイタリアでは「ドレミ」を使い、英語圏やドイツでは「A B C」を、そして日本では驚くべきことに、その両方に日本語の「イロハ」も併用している。中学時代、音楽も立派な入試科目だったので、理論を勉強したことがあるが、その時の苦労をいまだ忘れられない。ハ長調、イ短調と言いながら、ドレミで音符を読み、嬰ハ長調とか変ホ長調と言いながら、ドのシャープとかミのフラットを使っていた。長じて、ギターを弾いた時、AmとかB7とか、今度はABCときたから驚く。当時は知らなかったものだから、楽譜というものはこういうものかと思っていたら、フランスのギター用の楽譜を見て愕然とした。Do7とかRé mとか La #mとなっていたのだ。そうかそうか、フランスではすべてドレミなのだな。フムフム・・・妙に納得したことを覚えている。

《続く》
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外来語こぼれ話 | 17:57:17 | Trackback(0) | Comments(0)
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