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外来語こぼれ話(4)・・・「きしめん』対「ひもかわ」
 だから、アバルトマンはあくまで集合住宅の中の各住居を指し示す語で、その集合住宅の建物全体を意味していない。マンションなどの建物をフランス語で「イムーブル immeuble」 と言う。この言葉に対応する日本語がない。日本では「アパート」「マンション」が二重の意味を持って獅子奮迅の活躍をしている。つまり、「家の前にマンションが建った」と言うときの「マンション」は immeuble の意味で、「5千万でマンションを買った」時の「マンション」はアパルトマンの意味だ。マンションをアパートに置き換えても同じだ。断っておくが「ビル」とは違う。ビルは建物の意で集合住宅とは限らない。


 さてまたマンションのことだが、こうなると不動産屋さんはどんな物件も「アパート」と呼ばなくなるからおかしい。たとえばひと部屋しかない狭い物件も一度地に落ちた呼称を使わずに「ワンルーム・マンション」と言う。このままだとアパートは死語になってしまうだろうか。アパートに義理はないがちょっと心配だ。
 というのは、これは外来語ではないが、同じような現象がうどんの一種に起こっているからだ。平べったい麺に対してかつて普通に用いられていた「ひもかわ」という呼称(「ひもかわ饂飩』の略、子供の頃にはすでに「饂飩」が落ちていた)が、関東地方にはせいぜい40年の新参もの「きしめん」に取って代わられようとしている。ご存知のように、「きしめん」はもともとは名古屋地方の呼び名だったのに、現在では関東でも平然と使われている。かわいそうな「ひもかわ」。
 先日スーパーで、上州産の「きしめん」を見たときは危うく落涙するところだった。この製品、袋の中身は、他ならぬ「ひもかわ」なのだが、袋には「きしめん」と書かれていた。とりわけ北関東ではかつて「ひもかわ」が栄華を誇っていただけに、哀れでならない。彼は我が身の落魄ぶりにどんな悔しい思いをしているか。

三人.JPG
上州「きしめん」
 どんな思いで、上州小麦はきしめんを甘受したのだろう。製麺所に積まれた小麦の気持ちをあれこれと忖度しながら袋を見ているうちに、何やらひらめいた。「上州小麦の風味を生かした』という表現がどうもまだるく、うそっぽい。
もし、「風味を生かした』だけで上州小麦を使用していなかったとしたら、「きしめん』となる恥辱にも耐えられ、上州小麦の矜持は守られるというわけだ。
(裏面に、小麦の原産地は明示されていなかった。また、製品の名称は「ひらめん』となっていた。ちなみに、「さぬきのきしめん」という製品の名称は「きしめん」だ。また、「ひもかわ」という項目はあるが、「ひらめん」という単語は広辞苑に乗っていなかった。)


 これも一種の高級化現象と呼べるだろう。というのは、「ひもかわ」にはすまないが、幼少の頃の「ひもかわ」体験から思い出されるのは、繊細なうどんの味というよりも、油揚げと深谷ネギを入れた煮込みうどんばかりだ。だから、大学生の頃、初めて「きしめん」屋さんできしめんを食べたとき、たかが「ひもかわ」が、アサツキなどの薬味を従え、上品な薄口の汁に浸りながら、しゃれて登場したのに驚いた。思えばあれで「ひもかわ」の運命は決まったのだ。その後のひもかわは田舎風の煮込みうどんとして活路を見出すしかなかったのだが、山梨から「ほうとう饂飩」という、強烈な煮込みの大将みたいなのがやって来て、ひもかわに引導を渡した。「ひもかわ」という、実体を伝えず、形態だけの名を持つ(ゆえに、名前を聞いただけでは、食べ物かどうかすらわからない)、このうどんはこうして死に瀕しているのだ。センチメンタルな僕は、「ひもかわ」の袋を見つけては、哀れに思い、必ず買うことにしているのだが・・・
 だいぶ話がそれてしまった。ワンルーム・マンションのことだった。こういうひと部屋のマンションをフランスでは、「スチュディオ studio」と呼んでいる。原語を見ればお分かりのように、英語や日本語ではこれは「スタジオ」で、マンションとはほど遠い、仕事場、放送室のことだ(フランスのスチュディオにもスタジオの意味もあるが)。
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外来語こぼれ話 | 09:33:22 | Trackback(0) | Comments(0)
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