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石田明生

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パリ・・・お気に入りのポイント
 パリ旅行の際、必ず行くところがある。
 「カルナヴァレ美術館」「フナック fnac」「BHV」「ジョルジュ・ブラッサンス公園の古本市(土・日の午前中)」「蚤の市」、無料の日に当たれば(毎月第一日曜日)ルーヴル美術館だ。
 かつての貴族街、マレー地区の「カルナヴァレ美術館」は、ルネッサンス様式の美しい館だ。もとは「ケルヌヴォワ Kernevoy」夫人の名前を冠していたのだが、音がなまり、Carnavalet 館となったらしい。だから、直感的に浮かぶ「カーニヴァル carnaval」とはなんの関係もない。この館が有名になったのは、もちろん美しい外観内観もさることながら、なんといっても17世紀にセヴィニェ Sévigné 侯爵夫人がここに住み、サロン文学の花を咲かせたことによる。

IMG_0891.jpg
カルナヴァレ美術館「閨房」18世紀

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セヴィニェ侯爵夫人



 現在、この館が人を引きつけるのは(僕もその一人だ)、パリの歴史博物館となっているからだ。しかも、年中無料なのがうれしい(月曜・祭日休館)。膨大な美術品が収蔵されているから、何度足を運んでも必ず新しい発見がある。古代(ローマ時代はもちろん、石器時代まで遡る)から近代まで、パリ史が時代ごとに区分されていて見やすいので、僕は見る時代をあらかじめ決めて見学するようにしている。
 「フナック」と「BHV」は言うまでもなく、本とCD・DVDを物色するためだ。
 「蚤の市」と「ジョルジュ・ブラッサンス公園の古本市」に行くのはもちろん、古新聞・古雑誌と古本を漁るためだ。「漁る」とオーバーに書いたが、ふところ具合と帰国時の荷物状況に相談せざるを得ず、目と手で「漁る」だけで、買えずに涙を呑むことがしょっちゅうだ。

古本市.jpg
ブラッサンス公園の古本市

 ところが、昨年夏、ジョルジュ・ブラッサンス公園の古本市で見つけた一冊の本は、ふところもスーツケースも喜んでオッケーマークをだしてくれるような理想的な掘り出し物だった。700ページで厚さ9センチもあるのに、値段は7ユーロという格安で、なによりもビックリしたのは、軽いことだ。紙質のせいだろうが、本の厚みからすると、手にした時、上に挙げ過ぎてしまうほど、軽い。
 実は、内容もそれほど重くはない。著者は、日本でもだいぶ訳されている歴史家のアンドレ・カストロ André Castelot だ。彼はアラン・ドゥコーと並んで、いわゆる、お堅くない歴史家の代表で、フランス史をわかりやすく紹介している。

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 『歴史暦(仮訳) L’ALMANACH DE L’HISTOIRE』という書名を持つこの本は、とりわけ軽快な筆さばきで、歴史上のひとこまひとこまを楽しくかいま見せてくれる。
 1年、365日を一日一日、「私」とつれあいの「クリオ」がその日に歴史上起こったことを話題にして、過ごすという趣向(今日は、歴史上何があったか?)を凝らした本だ。当然小見出しは365あり、ページ数も700ページになってしまうわけだ。
 劈頭の1月1日に、「私」も紹介しているが、チャーミングなつれあいの名前「クリオ」は、ギリシャ神話に登場する9人のミューズの一人の名前だ。歴史を司る。
 ついでに、ムネモシュネとゼウスの娘たちを紹介しよう。
 巨人たち(ティタン、英語でタイタン)に勝利した後、ゼウスは、オリンピアの神々たちを楽しませようと、「讃える女たち」を生み出すことにした。そこで彼は、マケドニア地方に赴き、「記憶の女神」ムネモシュネと9夜床を共にした。こうして、記憶の女神はのちに9人の娘を生む。それがムーサイ(単数で「ムーサ」、フランス語でミューズ)だ。彼女たちはそれぞれ特技を備えていて、得意分野の歌を歌う。彼女たちに愛された人の口からは、甘く美しい話と歌が流れ出す(詩人となる)と言う。

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中表紙のクリオ、しかし、どういうわけか象徴(トランペット、水時計、巻物)がない。

 彼女たちの名前と特技(かっこ内は象徴)は以下の通り(表記はギリシャ語読みにした。かっこ内はフランス語読み)。
クレイオー(クリオ)・・・歴史(トランペット、水時計、巻物)
エウテルペー(ユーテルプ)・・・音楽(笛)
タレイア(タリ)・・・喜劇(喜劇用のマスク、松かさのついた杖)
メルポメネー(メルポメーヌ)・・・悲劇(悲劇用のマスク、ヘラクレスのこん棒)
テルプシコラー(テルプシコール)・・・舞踊(竪琴)
エラトー(エラト)・・・叙情的コロス(竪琴)
ポリュームニアー(ポランニ)・・・叙情詩(指を口に当てている)
ウーラニアー(ユラニ)・・・星辰(天球儀、コンパス)
カリオペー(カリオープ)・・・叙事詩(鉄筆と書字板)
注1) 特技は「ラルース百科事典」を、象徴はアシェット社の「神話ガイド」faire le point シリーズを参考にした。
注2) 属性(象徴)とは、絵や彫刻で表現された時、どのミューズか特定できる物やポーズのこと。


 私事で恐縮だが、僕は長い人生を歩んで来て、いずれのミューズからも愛されなかった、いや、一瞥も投げかけてもらえなかった。彼女たちが年寄り好みとは思えないから、もう希望もないわけだ。仕方ない、愛された人たちの文章や歌を楽しもう。
 というわけで、クリオに愛されたカストロの「暦」を追々紹介しよう。
《続く》
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パリ散歩 | 23:59:27 | Trackback(0) | Comments(0)
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