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石田明生

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二十世紀に出現した、不世出の吟遊詩人・・・ジョルジュ・ブラッサンス
ジョルジュ・ブラッサンスを初めてテレビで見たのは、何年、いや何十年前になるでしょうか?三十年は経っていると思います。でもその時の衝撃は今でもはっきりと覚えています・・・
前座はサルバトーレ・アダモでした。アダモが演奏を終えると、司会がひどく嬉しそうに「いよいよジョルジュ・ブラッサンスです!」と、叫びました。すると、当の本人がギターを片手に素っ気なく登場し、挨拶もろくにせず、やおら歌い出しました。二曲続けざまに歌いましたが、一曲は『謙遜家 Le Modeste』でした。♪~♪C'est un modeste♪~♪、このリフレインをよく覚えていますから。歌い終わると、にこっと笑って、これまたすたすた退場してしまいました。


Brassens.JPG


一緒にテレビを見ていたフランス人の友人のとても満足そうな様子から、これが彼のキャラクターかと思われましたし、その後そう説明されました。
なんてかっこよかったのでしょう!



それから三十年、僕はブラッサンシストを自称し(詐称し?)、彼の作品をLPレコードですべて集め(おかげで素敵なLP全集のコレクションがあり、僕の宝物になっています)、彼の詩を詩集を買い求めて読みました。妻に、僕の葬式の時は彼の曲を流してほしいと頼んで、ひんしゅくを買ったこともあります。でももしできたら、なんて楽しい素敵なお葬式になるでしょう。想像するだけでわくわくします。あれほど死と葬式を歌った彼にBGMを担当してもらえるなんて。
葬式と言えば、彼は歌の中で、セート(地中海岸の港町)の海岸に埋葬してほしいと訴えています。同郷の詩人、彼の敬愛するヴァレリーには詩句ではかなわないが、卑しいトゥルバドゥールとしては、せめてヴァレリーの海辺の墓地よりも汀(みぎわ)に近くしてくれるよう頼んでいます(『セートの海岸に埋葬されたし Supplique pour etre enterre a la plage de Sete』)。実際、彼の墓はポール・ヴァレリーの海辺の墓地よりも水に近い、トー潟の上に位置するピー Py の墓地にあります(1921年生~81年没)。
彼のパリの住居はXIV区にありました。何年か前に訪ねたことがあります。いよいよ彼の家を目のあたりにするんだと、重々しくアプローチを楽しみながら、身構え、深呼吸していますと・・・まるで目玉焼きの目玉を最後にゆっくりと食べようとするかのようにしていますと・・・近所の人でしょう、「ブラッサンスの家を探しているのですか?」と、いきなり声をかけてきました。頷きますと、アプローチものかわ・・・哀れ、目玉焼きの目玉よ・・・、たちまち連れていかれてしまったことがあります。大きなお世話、と言いたいところでしたが、彼はそれだけ近所の人たちに愛されていたということなのでしょう。


Parc G Brassens 時計台.JPG



彼の家の近くに、彼を記念して命名された「ブラッサンス公園」があります。高低差があり、かなり広い公園で老若男女が大勢ひなたぼっこをして楽しんでいました。この公園の一部分は土・日曜の午前中、古本市でにぎわいます。本の虫だったブラッサンスにふさわしいかも知れません。


Brassens 像のまわり.JPG



また、この公園から五分ほど歩いたところに、シャガールやモジリアーニが住んでいた有名な集合アトリエ「蜂の巣」があります。
と、こう書いていますと、なんだかパリ散歩になってしまいました。
いよいよ彼の歌を紹介しなければなりません。ところがこれが困難きわまりないのです。なにしろすばらしい詩がありすぎます。ビュリダンのロバよろしく選択できないまま死んでしまいそうです。歌人の塚本邦雄なら『マリーヌ(船乗り)』を選ぶでしょう(『薔薇色のゴリラ』塚本邦雄著[人文書院])。これから彼を何度も取り上げるという条件で、僕はまず最初に『哀れなマルタン』を紹介しましょう。これは、1954年に発表したもので、たぶん二十代の作品と思われます。
平凡で、正直者の農夫、マルタンの人生を淡々と歌ったこの歌は、なんとなくブラッサンスの原点のような気がしてなりません。

『哀れなマルタン』

肩に鋤をかついで
口元に優しい歌を口ずさみ
口元に優しい歌を口ずさみ
心は元気はつらつ
畑に行って、せっせ、せっせと働いた!

哀れなマルタン、哀れな百姓
土を掘れ掘れ、時間(とき)を掘れ!

一日一日口を糊するために
夜明けから日没まで
夜明けから日没まで
土掘りに出かけたものだ
幾里も幾里も、何時間でも

哀れなマルタン、哀れな百姓
土を掘れ掘れ、時間(とき)を掘れ!

顔には決して出すことはなかった
妬んだ様子も意地悪も
妬んだ様子も意地悪も
よそ様の畑まで耕した
せっせ、せっせと掘り返し、掘り返し

哀れなマルタン、哀れな百姓
土を掘れ掘れ、時間(とき)を掘れ!

いよいよ死が迫って教えてくれた
畑仕事も最後だと
畑仕事も最後だと
すると自ら墓穴(はかあな)掘った
急ぎに急いで、人目を忍び

哀れなマルタン、哀れな百姓
土を掘れ掘れ、時間(とき)を掘れ!

自ら墓穴(はかあな)掘ったよ
急ぎに急いで、人目を忍び
急ぎに急いで、人目を忍び
するとなにも言わずにそん中に寝転んだ
人様の邪魔になることがないように

哀れなマルタン、哀れな百姓
地中に眠れ、時間に眠れ!
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ポップ・フランセ | 23:54:29 | Trackback(0) | Comments(0)
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