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石田明生

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ドラマチックな世界に生きて、ドラマチックな世界を構築する。
今回は国民的な人気者、パトリック・ブリュエルを紹介します。
当時フランス領だったアルジェリアに生まれた(1959年)パトリックは、まず映画界で、その才能を発揮し、さまざまな映画に出演します。ですから、日本ではまず映画俳優として知られ、映画祭の折に来日もしています。
しかしそれは世を忍ぶ仮の姿、と言ってはおかしいでしょうか、彼の真の才能は実はまったく別個のふたつの道にあてがわれていたのです。

Bruel. JPG

ひとつはここで紹介するようにシンガーソングライターとしての才能、もうひとつは、なんと驚くべきことにポーカーの名人としての才能です。どちらも半端ではありません。特にポーカー名人としては世界チャンピオンにまで登りつめています(天はニ物を与える、のですかね。ちなみにスタイルもお顔も・・・うらやましい限りです。彼は結婚したばかりで男の子ふたりの父親です)。


まさにドラマチックな世界に生きる男にふさわしいですね。
そのせいでしょうか、彼の書く詩もドラマチックなものが多く、現実の一場面のスケッチがスケッチにとどまらず、動きをともなってきます。
ベルリンの壁が崩壊した時に作られた『いくつの壁が』も、石つぶての描写から始まり、「崩壊した壁の後ろにどれだけの涙が、憎悪が、恥辱が、どれだけの壁が隠れていることか」とドラマチックに歌い上げています。
実はブリュエルの紹介はこの『いくつの壁が』でしたかったのですが、この歌は『現代フランス語スケッチ』(第三書房・・・もし手に入るならばCD2枚付きのこの本は1990年代になりますが現代フランス音楽、グランジ、ラップ、レゲエ、ポップス、など色々収録されていてお薦めです)の中で取り上げられ、良質の訳が付けられていますので、やめました。
さてこのスペイン語の題名を持つ『絶対に、もう Nunca Mas』も政治的な事件を扱っています。舞台はアルゼンチンです。この「銀の国」という美しい名を持つ国も、1980年前後の軍事政権の頃は、多くの若者が殺されたり、行方不明になったりして悲惨な時代にありました。フォークランド紛争もその文脈で読み解かれます。
ブリュエルは何も言っておりませんが、おそらくその頃の子供をなくした女たち、母親たちの思いを歌に込めたのでしょう。
お聞きになれないのが残念ですが、プレリュードにブエノスアイレスの「五月広場」で録音した女たちのたくましいおしゃべりの声が流れます。

パトリック●.JPG


パトリック・ブリュエル1.JPG


ゴールドマン、パトリック.JPG

[左から、J-J.ゴールドマン、J-L.オーベール、ブリュエル]


このようないわゆる chansons engagees (社会・政治参加の歌)を歌うブリュエルですから、コリュシュの提唱した「ハートのレストラン」運動に共感しないわけがありません。事実彼は、J-J.ゴールドマンと共に前に紹介した『愚者たちのコンサート』の主催者のひとりと言っても過言ではありません。そんな彼の様子が上の写真です。
スペイン語の歌詞の部分は、スペイン語の堪能なマドリッド生まれのニルダ・フェルナンデスと歌っています。
この歌は彼の爆発的なヒットアルバム『Juste avant』(1999年、下世話な話で恐縮ですが何億円の売り上げだったとか・・・)に収録されています。

P.Bruel.JPG

なお、この訳に際して、スペイン語の部分はスペイン語の先生 koharu さんに御教授願いました。koharuさん、ありがとうございます。御礼申し上げます。


『絶対に、もう』

堂々として、美しい
女たちはくるくる回る、
皺は深くきざまれて、
涙はかれることなく
女たちは音をたてずに踊る。
子供たちは消えてしまった、
闇の中に消えてしまった
いなくなった我が息子たち

ピアソラ(注)の大地の上で
詩人たちは沈黙するか
声を潜めるかしかできず
でも、薄明かりの中を
人がみな夢を見ている頃に
ふいに、ひとつの声がする・・・

(スペイン語)
絶対に、もう!
絶対眠らないわ、絶対忘れやしないわ
あの子たちを消し去った風の吹くままに踊るの
血はずっと叫びつづけるの
いつだって風向きはついには変わるのだから

狂ったように女たちは踊る、
女たちは忘却を打ち負かした。
女たちは力を知っている
決して裏切ることのない力というものを。
歴史の流れはゆったりでも
それでも女たちは歴史の駒を進め
今宵、歌を歌う
悪魔どもは裁かれて・・・

(スペイン語)
絶対に、もう!
絶対眠らないわ、絶対忘れやしないわ
あの子たちを消し去った風の吹くままに踊るの
血はずっと叫びつづけるの
いつだって風向きはついには変わるのだから

注:アストル・ピアソラ(1921~92)、アルゼンチンの作曲家、バンドネオン奏者。アルゼンチンを代表する国民的音楽家
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ポップ・フランセ | 18:24:27 | Trackback(0) | Comments(2)
コメント
「絶対に もう」、素敵な訳ですね。
同じ歌詞を私ならもっと土っぽく訳すだろうなと思いますが
Scipion先生の訳はシックです!
2006-05-17 水 19:11:13 | URL | koharu [編集]
koharu さん、コメントありがとうございます。ブエノスアイレスのオバサンたちの台詞でしょうが、本当はもっと土臭い方がいいのですかね。難しいですね。では失礼します。
2006-05-21 日 14:30:32 | URL | Scipion 明生 [編集]
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