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石田明生

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国立工芸博物館(アール・ゼ・メチエ)と市立近代美術館
 8月17日(木)午前中、Arts et metiers (国立工芸院)に隣接した国立技術博物館に行く。何年か前から見学したかったのだが、色々な事情(修復工事も長かった)で入れなかった、ついに今日実現する(入場料:6.5ユーロ)。
 ほくのパリの根拠地は20区のテレグラフというメトロ駅近くにある。このメトロの線は11号線で、パリの中心地シャトレが終点だ。その三つ手前に「アール・ゼ・メチエ」という駅がある。

駅名.JPG


ア-ルゼ駅.JPG

アール・ゼ・メチエ駅構内



 この駅は独特だ。壁から天上まで銅葺きになっていて、まるで潜水艦の中にいるように丸い窓がついている。驚いたことにベンチも、ゴミ箱までも同色にする徹底ぶりだ。

ゴミ箱.JPG

ベンチやゴミ箱まで

 国立工芸院や技術博物館がある駅にふさわしいと言えるかも知れない(パリのメトロの駅はその土地柄に合わせて作られているケースが多い。いずれメトロの駅シリーズを作ってみたいと思っている)。もちろん博物館ヘ行くのにはこの駅をおりる。


博物館名.JPG


8/17/・Zenobe Cramme,JPG

博物館入口、ゼノブ・グラム(ベルギー人の電気技師、発明家)像

 イタリアの学者ウンベルト・エーコが書いた小説『フーコーの振り子』のクライマックスはこのアール・ゼ・メチエのシャペルだったと思う。たいぶ前に読んだので少し記憶が怪しいが(図書館で借りて読んだので帰国した今も確かめられない。本代はケチルものではないな)、ここに七百年近く前に異端宣告を受けて滅びたテンプル騎士団の魑魅魍魎が集まったような気がする。

8/17/14ラヴォワジエ実験室.JPG

ラヴォワジエの実験室

 この博物館は技術工芸の博物館なので美的感覚とは無縁の場所だ。まず最初の部屋にいきなりパスカルの計算機があった。

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パスカル19歳の時製作した計算機

ボレの計算機.JPG

ボレの計算機

 その少し先にラヴォワジエ(1743-94)の実験室(彼は革命下、ギロチンの露となったが、数学者のラグランジュ(1736-1813)は「やつらにはあの頭を落とすのに一瞬しかかからなかったが、同じような頭を作るのに100年あっても足りないだろう」と言った)、そして機械、実験器具、織機、印刷機、写真機(最初の写真機ダゲールのもの)

8/17ダゲール1835.JPG

ダゲ-ルの写真機 (1835年)

や映写機(リュミエール兄弟のもの)などなどが広大な展示室に置いてある。その中に、ありました!1メートルを示すプラチナの原基が。

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1メ-トル原基と1リットルと1キログラム

 フランス大革命の記念すべき成果のひとつにメートル法の制定、つまり度量衡の制定がある。それまで、この博物館に展示されているように長さというものは体の一部を基準にしていた。たとえば両腕を広げた長さはトワーズ、足の大きさはピエ、指はプースという具合だ。革命は測量の単位までも平等を求める。なぜなら、体を基準にしたものでは様々な体格の人種・民族の住むこの地球上において平等とは言えないからだ。そこで何を基準にすれば、この地球上のすべての人間が共通のそして馴染みやすいものになるだろうか。

8/17/15世界の定規や枡.JPG

さまざまな定規や枡

 結局至った結論はすべての人間に共通の基準は地球の大きさということになる。
 さあ、測量だ!
 聞き及ぶところによると、北はダンケルクから南はバルセローナまで文字どおり足を使って測量したそうな。結局、北極と南極を通る(両極以外を通る一周では長さが異なる、ということはすでに知られていた)地球一周の四千万分の一を1メートルと定めて、それを度量衡の基準とした。そのプラチナ原基が目の前にある。開明的かつ革命的な学者たちの血と汗と英知の結晶だ。
 この原基を十分の一にして立方体を作り、1リットルと1キログラムを作った。

8/17/シャペル内.JPG

シャペル内

 やはりシャペルにフーコーの振り子があった。それは等間隔に円形に並べた親指ほどの大きさの金属の分銅を弾き飛ばす仕組みになっている。分銅と分銅のあいだが約5センチほど離れているのでしばらくすると静かな堂内に「パチーン」と金属音が響く。

振り子.JPG

フ-コーの振り子

 それはまさに地球が自転していることを示す音なのだ。係りの人に尋ねたら、5分ごとに鳴るそうだ。なんとしゃれた仕掛けだろう。

自由の女神.JPG

自由の女神像

 またこのシャペルには自由の女神像が立っている。後ろに回ると、次のように書いてあった。

MONUMENT
DE L'UNION FRANCO-AMERICAINE

LA LIBERTE ECLAIRANT LA MONDE

PAR A.BARTHOLDI
ERIGE DANS LA RADE NEWYORK
1886

LE MONUMENT EST EXECUTE EN COMMUN
PAR LES DEUX PEUPLES
ASSOCIES EN CETTE OEUVRE FRATERNELLE
COMME ILS LE FURENT JADIS
POUR FONDER L'INDEPENDANCE AMERICAINE

DIMENTION DU MONUMENT
Statue 56 Metres Piedestal 35 Metres
Hauteur totale 91 Metres

DUREE DES TRAVAUX
1875-1885

[訳]
フランス=アメリカ結合のモニュメント

世界を照らす自由

A.バルトルディにより
1886年ニュ-・ヨ-ク港内の島に建てられる

モニュメントはこの友愛活動に参加した
両国民によって
共同で建設された。
かつて両国民がアメリカの独立を
揺るぎないものにするためにそうしたように

モニュメントの大きさ
像の高さ:56メートル 台座:35メートル
全長:91メートル

工事期間
1875年から1885年まで

 ちなみに、前面にはおきまりの標語が書いてあった。

LIBERTE(自由) FRATERNITE(友愛)
EGALITE(平等)


 係りの人に後ろの文言はニューヨークの自由の女神像の後ろにもあるのか確かめたところ、あると言った。

 この独立100周年を記念する巨大なモニュメントは、やはりフランスとアメリカ合衆国が同じ価値観を共有していることを如実にしかも力強く物語っている。その価値観とは、前面に刻まれた「自由・平等・友愛」という18世紀の啓蒙思想から生まれた理念のことだ。
 ちなみに、あの巨大な自由の女神像の制作費はフランスの民衆からの募金でまかなわれた。製作は彫刻家のバルトルディ、内部の鉄の骨組みはエッフェル塔で名高い技師エッフェルによる。この像がフランス国による寄贈ではなく、民間によるところが大切だ。だから、その感謝のしるしにのちにアメリカからその縮小版をお返しにもらうがそれも民間によるのはそのためだ。その像はセーヌ河の中州の島に立っている。

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中州の島の中央を通る「シーニュ(白鳥)遊歩道」の先端に立つ自由の女神像
驟雨のバトー・ムーシュから

 昼食は博物館からさほど遠くないサン・ドニ門近くのインド料理店で Plat du jour(定食)を食べた。一応値段も言った方がいいだろうか。我が家のつましさがばれてしまうが、思い切って報告しよう。妻が5ユーロ、ぼくが6ユーロの定食をとった(現在1ユーロ150円位)。当たり前だが、この店はいつ来ても満員だ(こういう安い店がお望みならご一報下さい。場所をお知らせします)。

 午後はこれも念願のパリ市立近代美術館(無料)を見学する。このパレ・ド・トーキョーの東翼を占める美術館も長年修復していて入れなかった。

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 ここはなんと言っても壁一面に描かれたマチスのダンスの絵が有名だ。
本当に無料で入っていいのか戸惑うほどの立派な館内で、入り口でしばらく佇んでしまったほどだ。「本当にただで入っていいの?」これがいつわらざる気持ち。

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ダンス未完成

 階段を降りると大きなホールにマチスのダンスの未完成作品があった。それだけで満足して帰ってしまいそうなほどの迫力だったが、さらに奥のホールに入ると、今度はカラーの「ダンス」があった。言葉を失ってしまいそうになる。実際、他の二・三人の見学者もみな何も言わず見入っている。

ダンス.JPG

 この美術館のすごさは実はこれだけではない。さらに階段を降りると展示室が次々と続いて、フォーヴィスム、キュービスム、シュールレアリスム、ポップアート、モダンアートの作品が展開される。

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「大静物画」オザンファン

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「オルフェ」ザッキン

 また映像資料もあったが、とても時間が足りず、それは割愛せざるをえなかった。
 パリに住むということはこういうことなのだ、とつくづく思う。
 この美術館もそうだが、プチパレやカルナヴァレ美術館はどれもみな一日でも見切れないほどの規模を持つ大美術館だ。それ程の美術館でも無料なので、休館日を除いていつでも好きな時に、極端に言えば雨宿り代わりに入っても、一級の作品を鑑賞することができる。他に小さな美術館、ヴィクトール・ユゴーの家、ブールデル美術館、ザッキン美術館なども無料だ。だから無料の美術館めぐりだけでもかなり有意義なパリ滞在が可能となる。

ブルトン肖像.JPG

「ブルトン肖像」V. Brauner

 そして、有料の美術館でも、たとえばルーヴルやオルセーでも、18歳以下は無料だから、パリで育つということはあらゆる美術館、博物館を自分のものにできるということになる。

Jean Harpe,JPG

ハンス・アルプ Jean ou Hans Arp

ポップ・アート2.JPG

ポップ・アート

 この度どこの博物館でも無料となった16歳の姪と一緒だったので、ことさらそのことを痛感した。

美術館.JPG

パレ・ド・トーキョーを下から見る。左側はコンテンポラリー・アート、右側が近代美術館となっている。
中央にブ-ルデルの彫像「フランス」があり、その下にシャルル・ペギー(詩人)の言葉があった。
母上
ご覧下さい、あなたの息子達です
こんなにも
闘いました
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パリ旅行記(2005年) | 21:20:55 | Trackback(0) | Comments(0)
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