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石田明生

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WBCの真の英雄・・・杉内投手
 ここ両日、新聞、テレビ,ネット、すべてのメディア上でWBCの日本チーム・サムライジャパン優勝のニュースが小躍りしている。少ない参加国の大会とはいえ,野球の、それこそ野球一筋とも言えるような国や大リーグを抱える国、日本打倒に執念を燃やし、マウンドに国旗を立てるようなナショナルな国を打ち負かしての優勝だからそれなりに価値がある。
 日本中が注目していたらしいのはテレビの視聴率を見れば明らかだ。かくいう僕もその視聴率の上昇にしっかり貢献した。試合の最初から最後までテレビに釘続けになった口だからだ。
 優勝後の歓喜の勢いは、すべての些末な問題も押し流し、途中でいろいろ言っていた評論家諸氏の批判もなにもかにも呑み込んで、結果よしの大波に覆われた。それでいいのかもしれない。
 が、そこは『へそ曲がり』を自認しているスキピオ。冷水を浴びせるようで申し訳ないが,決勝戦をつぶさに見ていた僕としては、どうしてもひとこと言いたい。


 それは、二番手のリリーフ投手として出て来た「杉内投手」のことだ。延長戦を制しての、しかもイチロー選手というスターの劇的な活躍で幕を閉じたから、今のところ誰も問題にしていないようだが(すべてのメディアに目を通しておりません),あの9回の杉内からダルビッシュへの投手交代についてもの申したいのだ。
 8回の二死に、先発の投手(岩隈)がそれこそアップアップになって、救援に出て来たのが杉内投手だった。彼は,次打者をレフトフライに打ち取ってこと無きを得,最終回の守りのためピッチャーマウンドに立った。相手は左打者が二人続くので、左の杉内が続投するのは当然と思われたが,それ以上に、彼のWBCでの戦績は、救援投手として誰をも信頼させるものだった。なにしろ失点どころか,被安打もなかったのだ。
 実は僕は、杉内投手は8回の頭から登場するものと思っていた。だから、8回裏も岩隈が出て来たとき一瞬危ないと不安がよぎったが,やはり思った通り加点されてしまった。要するに,明日のない試合の割に先発投手を引っ張り過ぎの感があったのだ。
 ところが、9回の杉内に対しては,右の代打が出て来た瞬間に、監督はダルビッシュに交代してしまった。次に左の強打者が控えているというのに。いや、杉内の今までの実績からいえば,いまだヒットを打ったこともないような(WBCの試合で?)右の代打が出て来ただけで簡単に彼を代えてしまうとは・・・

 《杉内は唇を噛み締めてベンチに向かいました・・・》

 アナウンサーはこんなように言っていた。彼の悔しさはどれほどだったろうか。僕には痛いほどわかった。以降、僕は断然彼の気持ちの側に居続けようと思った。
 それからは,ご存知のようにダルビッシュ投手が力んで(?)四球を連発し,同点にされた。が「さよなら」を許さず,延長戦になり、10回を抑えて勝利・・・何度も何度もその勇姿がニュースで流れることになった。
 決してダルビッシュ投手にケチをつけるつもりはないが,彼は要するに同点にされたにもかかわらず、打者の活躍で勝利を得たということで、一人で危機を作り、それを乗り越えたと言うことだ。
 ひるがえって,杉内投手の気持ちはどうだろうか。もし、9回を任せてもらえたなら,そのまま終えたかもしれない。あのまま抑えられたかもしれない。
 もちろん、それはだれにもわからないが・・・
 僕はテレビで勝利後の彼の姿を追った。インタビュー,シャンパン掛けのシーン,飛行場・・・残念ながら、見いだすことはできなかった。というのは、実は彼の顔をよく知らないのだ。打ち明けると,杉内投手を知ったのもこの大会からで、それまではまったく知らなかった。だから、この一文が杉内ファンのものでないことは保証できる。第一に彼が日本のどこのチームに所属しているかさえ知らないのだ。最初,原監督の彼に対する無慈悲な使い方を見て,身内のジャイアンツの選手かなと思ったのだが,そうではなかった。
 それからは,紙面の「選手の喜びの声」に目を向ける。毎日新聞のスポーツ欄には彼の一言はなかった。
 彼はどんなことを思い,どんな気持ちでいるのか、気になって仕方がない。そこで、ネットで見たら,報知新聞に彼に触れた記事が載っていた。

《「どこに投げても抑える自信があった」強がりじゃなかった。クールなサムライは「めっちゃうれしかったよ。前回の優勝より、満足感も充実感もある」と、最後の最後で笑顔を見せた(報知)》

 この《めっちゃうれしかった》は、スポーツマン的な表向きの感想でなく、本音であることを祈りたい。それでも,報知の記者は僕が心配した点を共有していたのかもしれない。《最後の最後で笑顔》という表現に見えた気がした。
 フランスの劇作家エドモン・ロスタンの傑作『シラノ・ド・ベルジュラック』の主人公シラノは、詩作であれ雄弁であれ、自己の才能を恋敵のクリスチャンのために惜しみなく使い,黒子に徹する。結果美女ロクサーヌの甘い口づけは美男のクリスチャンのものとなる。死の間際に彼は,新進の劇作家モリエールに台詞を盗作されたことを知り、問い返す。
「その台詞は観客に受けたか?」
「ええ,そりゃあもちろん」
「それでいいではないか。モリエールは天才で,クリスチャンは美男だった」

 杉内投手が、シラノのような台詞を吐くかどうか知らないが,僕は断固彼の代りに言おう。
「それでいいではないか、イチローは天才で,ダルビッシュは美男だった」
 テレビ画面で何度も何度も映し出される表の英雄とは別に、真の英雄は、シラノ・ド・ベルジュラックがそうであるように,杉内投手、あなたなのですよ。あなたが交代させられずに、9回を三人でぴしゃりと抑えていたら・・・表の英雄たちは存在さえしなかったのですから。
 これからの活躍を期待しています。
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雑感 | 09:14:20 | Trackback(0) | Comments(0)
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