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石田明生

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草君と狭量社会と「闇の仕事人」
 このニッポンに住んでいて、時々いやだなと思うときがある。それは、何かの折りに世間というか、世論というか、マスコミの報道というか・・・要するに社会全体が定規で線を引いたみたいに善悪をぴっちりと分けて、片側を完全に排除してよかれという雰囲気になったときだ。
 このたびの草君の事件も最初そういう様相を呈していた。
 木曜日(22日)の昼頃、同僚から「草が公然わいせつで逮捕」というニュースを聞いたときは、よくはわからなかったが、「へえー、それはすごい、おもしろい」と思った。というのは、「公然わいせつで逮捕」というニュースから連想したのは、電車内や通り、あるいは広場など公衆の面前でいきなり男が下半身を露出する事件だったからだ。


 僕はかねがねそれについて考えていた。サラリーマンや公務員を何年もまじめに勤めていた男がいきなり公衆の面前で下半身を露出して、それまで堅実に生きて来た人生に終止符を打つ。そのニュースに触れるたびに僕は胸を打たれた。なぜだろう。なぜ人生の終止符が暴力や自殺ではなく、下半身露出なのだろう。
 フランスの作家アルベール・カミュは『シジフの神話』のなかで、日常の繰り返しから突然頭をもたげる「不条理」について書いている・・・とここまで書いたが、このテーマについては、実際この事件が起こったときに譲ろう。
 問題はこのたびの草事件だ。その日、帰宅してテレビをつけたら、その話題がペストのように蔓延していた。「草容疑者が・・・」「草容疑者が・・・」そしてよく聞くと、彼は深酒をして正体をなくし、自宅近くの公園で素裸になってわめいていたところを通報され、逮捕されたということらしい。今大麻に敏感な折りがらなのだろう、尿検査の結果まで発表されていた(薬物反応なし)。そのうえ、驚いたことに、というよりあきれかえったことに、家宅捜索までしたそうな・・・
 ここまで来ると、草君は完全に犯罪者である。そして、この事件報道の滑稽さを頂点にまで押し進めたのは、前の法務大臣、今の総務大臣の鳩山とかいう、日本の恥部のような柄の悪い男のコメントだ。彼はテレビ局のマイクに向かって「(草君を)絶対に許さない」とか「最低」だとか、のたまはったのだ。
 この男、ひと月ほど前には、東京駅前の郵便局の壊れかけた建物を見て、「誰が壊した!」と怒鳴り散らしている姿がテレビに映されていた。その時の様子はどこかのヤクザの親分のような下品さだったことは記憶に新しい。さらに時間を遡れば、この男、法務大臣の頃には、死刑囚の死刑執行について大臣の認可を自動的にならないものかとぼやいて平然としていたことも思い出される。

 草氏についての発言を聞いたとき、僕の怒りもついに頂点に達した。僕はさっそくとあるところに行き、自分ではできない恨みを「闇の仕事人」に頼んだ。
 「どうか**という、悪徳大臣に庶民の怒りの鉄槌をくだして下さいますように。ただし、お手前方のいつものお仕事と違って、あの男をこの世から消すのではなく、公衆の面前で生き恥をさらして下されば十分です。お願いします。はい、これは些少ながら仕事料です」
 こう言って僕は、へそくりで貯めた貯金を置いた。

 さて数日後、テレビも新聞も前代未聞、空前絶後の大事件でもちきりとなった。以下はその抜粋だ。
《ゆうべ秘書と別れたあと、行方不明となっていた**総務大臣が発見された。発見された場所は渋谷のハチ公前広場で、大臣は下半身を露出したままあぐらをかいて座り込み、何やらわめいていた由。完全に酩酊状態だった》
 ハチ公前にいた人たちは最初酔ったホームレスと思ったらしく、遠巻きにしていたが、フルチンの大臣と知って仰天したらしい。以前ローマでの記者会見をした外務大臣のようにろれつが回らず、大臣は何ごとかをぶつぶつ・・・

 こんなことを想像させる下品な大臣のインタビューだった。だが、問題はひとりの愚者にとどまらず、警察の動きも報道の仕方も、一時期は「草=悪者」という単純な構図の上にのった感があることだ。さいわい、時間とともにこの構図は崩れ、この文章をブログに載せる頃は多分草君のことを悪し様に言うものはいなくなっているだろう。すると驚いたことに、自分の人気に自信が持てなくなったのか、あの恥部大臣ならぬ鳩山大臣も、あれは言い過ぎだったと釈明し出したから笑ってしまう。「闇の仕事人」の仕掛けの切れ味はすごい。
 それにしても、何かの折りに顔をのぞかせる、日本的狭量さ,良く言えば日本的潔癖さには、うんざりさせられる。若者が(34歳でも若いのだ)、少々酒を飲んで羽目をはずしたからと言って眉間に皺をよせる大人がやたら多い。草君の場合,誰も傷つけず,侮辱せず、一人で酔っていただけではないか。そもそもそれが大ニュースになること自体、なにかがおかしい。
 以前,フィレンツェの大聖堂の落書き事件があった。あれも日本的狭量さをまざまざと見せつけてくれた。とりわけ,学長が当の学生を連れて謝りに行ったと聞いて,日本特有の過度な潔癖さがここに極まれりと思った。フィレンツェの市長か誰かは、仰天していたらしい。さもありなん。イタリアには日本的な狭量さなどないだろうから。まあ,落書きのすごさもすごいが・・・
 落書きは悪いことだ。それはそうだ。泥酔は悪いことだ。それはそうだ。そんなことはわかっている。でも若者は,いろいろなことで落書きもするし,泥酔もする。それでいいではないか。大人は「しょうがないな」と苦笑していればいいではないか。その大人だって若いときには,落書きもしたし,泥酔もしたのだ。だから社会は人間関係に円滑さを保っていられるのだ。
 いっさいの悪戯も酒酔いも許さない,潔癖主義の社会こそ、逃げ場のない,発散しようのない、切れた若者を生むのではないだろうか。
 社会に恨みをもっている若者は,社会に仕返しをする前に、一度泥酔して,公園に行き、素っ裸のフルチンで、転がりわめいてみてはどうだろう。何かが変わるかもしれない。
 素っ裸は暴力なんかに向かうよりも何千倍もいい。
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雑感 | 11:26:32 | Trackback(0) | Comments(0)
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