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水の話
 一昨日と昨日、一冊の本に没頭し,読みふけった。『世界が水を奪い合う日・日本が水を奪われる日』(PHP研究所)という,長くてショッキングなタイトルの本だ。ショックなのはタイトルだけではなかった。三百ページ足らずの葉数に、身近なくせになんにもわかっていない水に関する情報、しかもショッキングな情報がびっしりと詰まっていたのだ。
 著者の橋本(淳司)氏は、言語感覚が優れておられるのだろう、まず最初に rival の語源がラテン語の「小川」を意味する rivus の派生語 rivalis から来ていることを指摘する。rivalis とは『同じ川の水利用をめぐって争うもの』という意味らしい(手元の羅・仏辞典で確認)。つまり、ライバル(競争相手)は水と切っても切れない関係にあるというのだ。

水の本




 それもそのはず、我々65億の地球人たちは、1.5リットルのペットボトルに換算すれば,そのうちの目薬一滴分の水しか利用できないのだから・・・待て待て、少し舌足らずになってしまった。
 「水の惑星」と呼ばれる地球だけあり、確かに地球上には水がふんだんにある。が、その水はほとんど海水であり,人は利用できない。人が利用できる淡水は,地球上の水の2.5パーセントにすぎないのに、驚いたことにその淡水の70%は南極や北極で氷となっているのだそうだ。そういうわけで、目薬一滴の比喩が登場することになる。つまり、我々の利用できる水は,地球上の水のたった0.01%にすぎないのだ。
 こうして古代の「ライバル」は、21世紀になって俄然現実味を帯びて来る。《二十世紀は領土紛争の時代だったが,二十一世紀は水紛争の時代になるだろう》(p.24)と、ある要人は指摘する。
 日本にいると,このような水不足の指摘は単なるこけおどしとしか思えないのも当然だ。水道からは、事故か災害にでもあわない限り、水はほとばしり出て,梅雨時や台風のときには、いやというほど水の洗礼を受ける。まして他の国々のように,大河を共有しているわけではないので、外国に水源を奪われるという心配もない。
 そんな日本でも、ボトル水として大量に水を外国から輸入しているのは不思議だ。僕には「ヴォルヴィック」や「エヴィアン」を買って飲む習慣がないので、学生が授業中机の上にそれらのボトルを置いているのを見ると、何ともいえない気持ちになる。フランスから、つまりユーラシア大陸の西の果てから、水の豊かな日本、つまりユーラシアの東の果てまで、飲料水が運ばれてくるのだ。これを奇妙と思わずして何を奇妙と思えるだろう。他の飲み物ならわからないわけではない。たとえば、コカコーラや葡萄酒やウイスキーなら、日本にはないのだから、どれだけの手間(負荷)をかけても輸入したくなるのは人情だ。ところが水の場合は別だろうと思うが、やはり、ミネラル分が多く含まれた水でなければいけないのだろうか。というのも、橋本氏によると、日本で「ミネラルウォーター」と称されているボトル水は、ヨーロッパの基準に照らすと、わずかなものになるらしい。日本では単なる水道水などを浄化し、ミネラルを加えたものもそう呼んでいるから、油断がならない。以下に1990年に農林省が発表した「ミネラルウォーター類の品質ガイドライン」を引用させてもらおう(pp.89-90)。
 
・ナチュラルウォーター・・・特定の水源から取水した地下水を、加熱や濾過で殺菌や除菌したもの。自然水ではあるがミネラル成分はほとんど含まれていない。
・ナチュラルミネラルウォーター・・・ナチュラルウォーターのうちミネラルが地下で自然に溶け込んだもの。
・ミネラルウォーター・・・ナチュラルミネラルウォーターと同じ地下水を、加熱や濾過で殺菌や除菌した後、複数の地下水を混ぜたり、人工的にミネラルを加えたもの。
・ボトルドウォーター・・・水道水や河川水、蒸留水、純水などの飲用に適した水を原料としたもの。
 
 この中で、ヨーロッパ基準でのミネラルウォーターは、ナチュラルミネラルウォーターだけだそうだ。ボトルドウォ-ターなら、たとえ加工してあるとはいえ、水道水の七千倍以上の値段で、水を買っていることになる。もっとも他の清涼飲料水も、似たり寄ったりだが・・・
 ボトル水についてはこれくらいにしておこう。橋本氏が指摘するさらに驚くべきことは、日本が輸入に頼っている食物のことだ。ミネラルウォーターは、水の流れがはっきりしているので我々に見えやすいが、食物の場合は指摘されなければ気付かない。
 著者はこんな数字を出している。
 トウモロコシで換算して、鶏卵1キロを作るのにトウモロコシが3キロ、鶏肉1キロは4キロ、豚肉1キロは7キロ、牛肉1キロは11キロ必要とするらしい。つまり、食生活の変化で、日本人が肉食に変じ、牛肉を安く食するということは、オーストラリアやアメリカのトウモロコシを大量に消費するということだ。ところで、トウモロコシを育てるには大量の淡水を必要とする。つまり、食料自給率の低い日本では、ほとんどの食物を輸入に頼っているが、それはとりもなおさず、莫大な量の水を消費していることにつながるのだ。
 つまり、日本は国際河川を有しないから水の問題はないと言うのは早計で、日本も、食物の輸入という流れの中で、国際的な水紛争に巻き込まれざるを得なくなっている。事実オーストラリアでは、深刻な水問題が生じているらしい。
 最後に、水不足を解消するための水ビジネスについてひと言。
 フランスはパリの町を散歩していて、つくづく思うことのひとつに、道路のすごさがある。道路の清掃を見ていると、歩道のゴミを車道に落とし、その車道のゴミを歩道と車道の間にある穴から水で流して下水に落とす。それを毎朝繰り返しているのだ。以前下水のミュゼで見たのだが、落ちたゴミは、下水の流れに流され、集められ、分別され、最終的には肥料となるらしい。
 その下水も汚水も、もちろん上水も、パリでは二大「水ビジネス会社」(ウォーター・バロンと呼ばれている。「水男爵」)が経営していると言う。守備範囲は、セーヌ河の右岸と左岸で分かれている。その二社こそ、世界最大のウォーター・バロン「スエズ」と「ヴェオリア」だ。19世紀半ばに誕生した二社は、たとえばスエズが建設した浄水場の数は世界70ヵ国で1万件を超え、ヴェオリアは世界59ヵ国の自治体とほぼ5千件の運転契約をもっているそうだ。中国の上海の水道はこのヴェオリア社製だそうで、最近日本にも進出しているらしい。ちなみに、「スエズ」とは、その社名通り「スエズ運河(1869年開通)」を建設した会社だ(1858年創業、「ヴェオリア」は1853年にリヨン市で創業)。
 とんだ「水商売」の話になってしまった。
 ようするに、水は限られた資源なのに、食物輸入などで日本を始め先進国が独占し、次に発展途上国の人たちの生活が豊かになりつつある現在、それらの国々の人たちも牛肉など負荷の高い食物を食べるようになってきたということだ。水不足は必然だ。
 また、世界中の都市生活はパリのような上下水道完備の、衛生的かつ機能的な生活を求め、上に挙げたようなウォーター・バロンの活躍の場を提供する。そんな場合、水はどれだけ必要だろうか。
 当たり前のことだが、知恵もなにもない僕のようなものは、水を大切にし、食物を無駄にしない、つまり「もったいない精神」で生きて行くだけだ。もっとも、もともと高価な牛肉など僕の口には入らなかったが・・・
 この書は、身近な水についても縁遠かった水についてもあらためて総合的に考える契機になることはまちがいない。ここでは紹介できなかったが、日本中の水道料金についても言及されている。なんと地域により9倍も料金差がある! また、東京の水道水の美味しさは、国内はもちろん世界の都市と比べても、トップクラスだとか。うれしい情報もある(なぜ美味しいかは、この書に当たって下さい)。
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書評 | 07:31:47 | Trackback(0) | Comments(2)
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2009-08-06 木 04:59:19 | | [編集]
Re: Bonjour!
Bonjour!

Aiさん、ご無事にパリ着とのこと、よかったです。
フランス語会話ももちろんのことながら、パリ生活を楽しんで下さい。パリの町は散策すればするほど味わいが出て来ます。きっと、Aiさんらしい新しい発見があるでしょう。
お写真を送って下さいますか。楽しみにしています。僕のメールアドレスは以下の通りです。
champs_pierre@yahoo.co.jp
パリは世界一観光客の多い町です。スリや悪者も集まって来ていると思われます。くれぐれ気をつけて下さい。
では、Bon séjour à Paris!
2009-08-06 木 09:06:41 | URL | 石田明生 [編集]
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