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誕生日、映画『アニエスの浜辺』を見る
11月3日(火)低温・快晴

 昨日11月2日は僕の誕生日だった。だからというわけではないが、神田神保町は岩波ホールで映画を見て、慎ましやかな江戸散歩を楽しんだ。
 鑑賞した映画はアニェス・ヴァルダの『アニエスの浜辺 Les plages d’Agnès』だ。彼女の映画を見たのは何作目だろうか。『冬の旅』『ジャック・ドゥミの少年期』『落ち穂拾い』・・・だから,今度で四作目ということになる。この新作はまさにそんなことを思い起こさせる、ドキュメンタリー・タッチの映画だ。

岩波
映画の看板と古本市の光景



 『アニエスの浜辺 Les plages d’Agnès』には、彼女の幸せな80年がびっしり詰まっている。こんな映画を撮れる映画人は最高に幸せにちがいない。おそらく観客の誰もが,彼女の幸せぶりをこれほど見せつけられても、軽蔑することもなく、嫉妬することもなく,心からおおらかに拍手喝采をするだろう。アニェス・ヴァルダという人はそういうキャラクターの持ち主なのだろうが,何よりもこの自伝的映画の中で、嫌みのない「そういうキャラクター」を巧まず巧みに開陳しているのだ。
 それは,何度も繰り返される後ずさりのシーンに現れる。後ずさりは,現在から過去への遡行を表象しているのだろうが,鮭が川を遡るような力みが全く感じられない。彼女の後ずさりは、無理もてらいもなく、彼女の80年という映画人生をまるでランチボックスでも開けるように見せてくれるのだ。
 彼女の歩んだ人生の浜辺は、クロノロジーの命ずるままに転々する。幼年時代を過ごしたベルギーの浜辺,思春期に遭遇した地中海はセートの浜辺,著名な映画人として過ごしたアメリカ西海岸ロサンゼルスの浜辺,そして夫ジャックとともに休暇を過ごしたノワールムーチエ島の浜辺・・・こうした浜辺は彼女の生と性を形成し,彼女の思想を醸成する。なぜなら,「浜辺」は彼女の生きる場であると同時に彼女と何らかのかかわり合いを持つ仲間達との出会い、直接間接を問わない出会いの場でもあるからだ・・・ヴァレリー(詩人)、ブラッサンス(歌手)、セザンヌ(画家)、バシュラール(哲学者)、ジャン・ヴィラール(演出家)、コクトー(詩人)、トリュフォー(映画監督)、ゴダール(映画監督)、そして誰よりも愛するジャック・ドゥミ。
 僕は昨年,彼女が少女時代を過ごした町セートに行ったが,愚かなことにそのことを知らず,ただただヴァレリーとブラッサンスの足跡をたどっていた。この映画を見た後だったら,セートの町はまた違ったふうに見えたかもしれない。
 が、セートの町に行ったことがあったからこそ,映像に現れた少女アニェスの遊び場が既知のものとしてとらえることができたとも言える。あの領事館の前で、少女は戯れていたのだ!!!
 
領事館
去年の夏に訪れたセートの町の「領事館」、映画ではこの前で少女アニェスは兄弟や友達と遊びに興じていた。

 アニェス・ヴァルダの映像は、少女達を撮っても老婆を撮っても、あくまでも美しいリアリズムに貫かれる。食物をあさるホームレスも年老いた人のシミも、朽ち果てた家も落書きだらけの壁も、彼女のカメラは美の対象として執拗に追いかける。そのように作られた、様々な映像からなるこの『浜辺』は、彼女が映画の中で「パズル合わせ」について言及しているように、彼女の記憶の無数の断片をつなぎ合わせたモザイクともパッチワークとも言えるかもしれない。そのピースの一つ一つは、最後に彼女が80歳の誕生日として受け取る80本の箒なのだろう。というのも、箒はラルース辞典によると「年、年齢」を意味しているからだ。部屋いっぱいの箒は、彼女の80年という年輪だ。だから、この掃除道具に囲まれた80歳の映画監督は、僕たち観客をはっとさせるほど、若々しくかわいい姿をしているのだ。

箒
80歳の誕生日にもらった80本の箒(ブラシ等も含む)に囲まれたアニェス・・・パンフレットより

 映画館を出ると,周りは古本市だった。が、かわいそうに,時折ぱらつく雨のために、書棚にビニールシートをかぶせざるを得ず,今ひとつ気勢が上がっていない。おそらく、至る所で催されている大学祭も同じだろうか。負けずに若さを爆発させてほしいが・・・

 スズラン通りに「ロシア亭」というロシア料理の店があったので入る。酢キャベツ、ボルシチスープ、ハンバーグ(またはロールキャベツ、またはビーフ・ストロガノフ)、杏を用いたデザート,パンで、1050円なりだった。ロシア人らしい若者が忙しそうに立ち働いていた。この店,入る価値あり。特にボルシチスープはおいしかった。これはランチメニューを頼むと必ず付くからご安心を。

ロシア亭看板
_ロシア亭の看板

ボルシチ
スベオクラ(テーブルビートとも言われる赤い甜菜)の色が美しいボルシチスープ

 ロシア料理を食べたので何となく思い出したのが,明大下に昔からあったロシア料理レストラン「サラファン」だ。健在かどうか心配だったので見に行った。ちょうど休憩中で閉店中だったが存在はしていた。何となく,何の義理もないがほっとする。

ニコライ聖堂
ニコライ聖堂

 せっかくなので,ロシアついでに「ニコライ聖堂」を見ながら,聖橋を渡る。目的地は湯島聖堂だ。雨模様だったせいか,聖堂は静かなたたずまいを見せていた。このニコライ聖堂から湯島聖堂に至る行程は好きな散歩コースだ。が、湯島聖堂から秋葉原に向かったために,ご存知,あの秋葉、猛烈な騒音に心も体もすっかりなえてしまった。やはりやめておけば良かった。

孔子像
湯島聖堂、1975年に台湾(中華民国)の台北ランオンズ・クラブから贈られた孔子像が立つ。

鬼ぎん頭
湯島聖堂・大成殿(孔子廟)の屋根の鴟尾(しび)。竜頭魚尾のこの怪物は「鬼ギン頭(きぎんとう)」とよばれる。
天に向かっている槍のようなものは怪物がクジラのように噴き出している水らしい。


鬼龍子
屋根の下方に位置する「鬼龍子(きりゅうし)」、龍の9匹の子供の1匹と言われている。

 散歩を楽しむなら,少々遠くとも,湯島聖堂から神田明神、湯島天神から不忍池へと足を運ぶべきだったかも知れない。
 また一つ齢を重ねた。
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プロムナード | 22:36:29 | Trackback(0) | Comments(2)
コメント
お誕生日おめでとうございます
久しぶりのコメント投稿です。
なんか映画の話かと思いきや、後半はロシア料理、よだれが垂れてきてしまいました(笑)

たまには私も江戸町散歩にチャレンジしてみようかな(*^^*)
2009-11-04 水 02:00:17 | URL | titanx2 [編集]
Re: ありがとう。
遊びにきてくださり,ありがとう。
お元気に,張り切って,生徒指導に熱を入れておられると思います。

紹介したロシア料理、評判が良かったので写真を入れました。ご覧ください。
2009-11-04 水 09:14:45 | URL | 石田明生 [編集]
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