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石田明生

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映画『オーケストラ』を鑑賞する。
 メーデーの前日、仕事が休みだったので、久しぶりに映画を見に行った。
 銀座にある映画館「シネ・スイッチ」に到着したのが、11時10分始まりに会わせた30分前の10時40分頃。映画館に近づくにつれ、驚いたのは館前にできた人の列だ。「なあに、シネ・スイッチは2ホールだから、もうひとつの方だろう」と高をくくって到着したら、もうすでに「立ち見席です」の連呼ではないか。
 仕方がないので、次の回(1時50分から)のを見ることにする。フランス映画を見に行って、こんなに混んでいたのは初めだ。どうやら『オーケストラ』は評判がいいらしい。
 仕方がないので、昼食を先にすることにする。というわけで、銀座三丁目あたりで、手頃な食べ物屋を探して歩いた。ところが、これまた驚いたことに、昼の定食(洋風に言えばランチ)はどこでもだいたい千円前後という安値だったのだ。しかもかなり充実した内容だ。埼玉辺りの田舎者にとって、これはショックに近い驚きだ。まあ、安いのだからうれしいに違いはないが、何となく不安にもなる。デフレ現象を目の当たりにしているのだろうか?


 どこにするか迷いに迷って(決断力のない僕にとって、店選びとメニュー選びは常に困難の極み・・・うれしい困難だが・・・となる)、結局映画館と同じ通りにあるスペイン料理店にはいった。この店の前に、次のような千円ランチのメニューが書かれていたからだ。

値段表

 前菜は見ての通り、パエージャ、クリームソース・スパゲッティーなど五品からひとつ選び、メインは、牛頬肉の赤ワイン煮、若鶏の料理などやはり五品からひとつ選ぶ。次に、ここが日本的なのだがパンかライスのどちらかを選択し、最後にエスプレッソ・コーヒー、紅茶、スペインティーからひとつ。
 このようにビックリするほど安いのだが、問題は、他の店も和風であれ洋風であれ、似たり寄ったりなのだ。
 店内は、超高級の内装とは言わないが、なかなかの店だ。もちろん給仕する女性たちもれっきとしたプロ、もしくはプロらしく見える女性たち。

店内
11時からのこの店に、11時を待って入ったため、口開けの客となった。


 映画の話しをするつもりが、完全に食べ物屋の話しになってしまった。本末転倒もいいところだが、本来は映画のあと食事をしようと思っていたのが、逆になってしまったのだから仕方がない。もう少し、このレストランに付き合っていただこう。
 僕は前菜はスパゲッティー、メインは牛頬シチューを頼んだ。本当なら、セルベッサ(スペイン語でビール)といきたいところだが、映画前の食事の悲しさ、映画鑑賞中の居眠りが怖い。あきらめて水にする。

スバゲっティー
空腹時や大食漢にとって、この手の重い前菜は大歓迎だ。

パエーじゃ

妻が注文したパエージャ


牛頬牛頬肉の赤ワイン煮


 シチューにパンを浸して食べたときのうまさ、当然赤ワインが欲しくなったが、ぐっとこらえる。最後はエスプレッソ・コーヒーでしめた・・・かなりの満腹感・・・これでは、繁盛するのではないかと思って店を見回すと、いつの間にか満席になっていた。やはり女性客が多い。食後店を出る時には、待ち客が何組か列をなしていた。次の映画の回を意識してゆっくり食事したのが申し訳ないような気分になった。ところでこの店の名まえは、「エスペロ」というスペイン語だった。フランス語の「エスポワール」に似ているから、たぶん「希望」の意味だろう。開けた壷からやたらいろいろなものが溢れ出たので、パンドラはあわてて蓋をした。ところがそのために壷の一番下にあった「希望」は、外に出ることができなかった。というのはギリシャ神話だが、今時の日本、世の中のデフレ気味に「希望」は見えるのか。

 食後、時間がまだあったので、銀ブラをしたあと、上映1時間前位に映画館に到着した。驚いたことに、もうすでに並んでいる。結局、前列から2番目の席にやっと座れたが、もう少し遅れていたら、立ち見となるところだった。
 映画を見れば、好評の理由がわかる。アクションものでもホラーものでもないのに、濡れ場どころか色気もなにもないのに、2時間あまりという長い上映時間のあいだ、観客を引きつけたまま飽きさせないテクニックには驚く。この映画は、要するに、なんのことはない、干されていた指揮者とその楽団の復活物語でしかないのだ。それなのに、冗長とも退屈とも感じさせない。それはたぶん、思わず吹き出してしまう滑稽さと、盛りだくさんの鋭い皮肉、まるでボクシングのフックの連打のような皮肉のパンチによるのかもしれない。共産党政権崩壊後のロシアにおけるマフィアの台頭、落魄した共産党の再生への滑稽な努力、ボリショイ劇場の体たらく、シャトレ側のけちくささ、まさに皮肉のてんこ盛りだ。そのなかでも、笑っては済ませられないかもしれないのが、旧ソ連時代のユダヤ人への差別で、この映画の主張音にもなっている。もっとも、ユダヤ人のラデュ・ミヘイレアニュ監督は、インタピューであまりそのことにこだわってはいないと言ってはいるが・・・彼が言いたいのは、つまり、ユダヤ人への差別というよりも、人の中に常にひそんでいるマイノリティー(あるいは弱者)への差別ということだ。
 
オーケストラ     赤の広場
右の場面は赤の広場にて、ロシアでここだけ撮影許可が出たということだ(パンフレットから転載)


 クラシック音楽と楽団という地味な素材を扱っている、このスピーディーで愉快な映画は、時には漫画のようにレアリスムを無視して、まるでアメリカ映画の「ET」なみのマジックも用いられている(たとえば、赤の広場から飛行場まで歩いたり、偽造旅券で堂々とフランスに行ったり、リハーサルなしの演奏をしたり)。
 そうして最後の12分間を迎える。感動的なチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調だ。このラストはすばらしい。前菜、主菜、デザートと料理を楽しんで来て、たとえそれまでが極上物でなくとも、この最後の食後酒に、最高のヴィユー・カルヴァドスに舌鼓を打ち、酔いしれて食事が終わる満足感を味わうことができる。
 鑑賞後、かたわらにいた年配の男性は、「涙が止まらない」と連れ合いに話していた。そう、最後の最後にカタルシスを味わえるかも・・・
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プロムナード | 18:05:56 | Trackback(1) | Comments(0)
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『オーケストラ!』お薦め映画
「究極のハーモニーは技術ではない。魂だ!」コメディから一転、ラストでは感動作品へ。笑って泣いて元気をもらえるお薦め作品。 2010-05-09 Sun 17:49:29 | 心をこめて作曲します♪

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