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石田明生

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21世紀の妖精・・・ミレーヌ・ファルメール
 ミレーヌ・ファルメール Mylène Farmer、シレ-ヌ(=セイレーン)もかくやと思われる歌声を持つ、この魔性の女に今取り憑かれている。彼女の、絹糸のような細い声は、高音になると朝顔の蔓のようにトリルとなって天に向かって上昇する。切れるのではないかとハラハラさせられるが、限界ぎりぎりですっと下降に転ずる。その危うさが何ともいえない。

Mylene
ミレーヌ(http://nightquest.bsx.ru/album/displayimage.php?album=random&cat=0&pos=-1453)


 アップテンポなロックも、波のうねりのようなバラード調の曲も、はたまた電子音鋭いエレクトロニカもその細い声に見事に融合する。そこから紡ぎ出される詩句は、オスカー・ワイルド、ジャン・コクトーを彷彿とさせる耽美であったり(“Je te rends ton amour” “Sans logique”)、18世紀、大革命前のバロック的な頽廃・・・フラゴナールやブーシェの世界・・・であったり(“Libertine” “Pourvu qu’elles soient douces” )、あるいは19世紀末のキャバレー「シャ・ノワール」なら展開されたかもしれないストリップティーズ的(世紀末的)なセクシュアリテ(“L’amour n’est rien”)であったり、どれもこれもきわめてフランス的な快楽をたっぷりと含む。

http://www.youtube.com/watch?v=WQ7L9XLjBic

“Paradis inanimé”Mylèneのライブ


 そのゴシック体のフレーズに快いメロディーを与えている作曲家ローラン・ブトナLaurent Boutonnat は、驚くまいか、映画作者でもある。だから、当然のことながら、ミレーヌの無尽蔵な魅力を、自ら生み出したメロディーにのせて、惜しみなく、余すところなくプロモーションビデオで見せつける。
http://www.youtube.com/watch?v=clvQDSWEQg0
“Sans logique”

http://www.youtube.com/watch?v=2z4WSgWn9CU&feature=fvst

“Libertine”

 21世紀にまで迷い込んだ妖精ミレーヌは映像の被写体としてもすぐれた演技者でもある。その白い肉体は、一見もろくて、歌声と同様今にも壊れそうだが・・・いやむしろきゃしゃに見えるからこそ、破壊と暴力にさらされ、血と汚泥にまみれたときにその真価を発揮するのかもしれない。その危うい美しさを、30年来作曲家としてコンビを組むローラン・ブトナは、時にはゴシック的、時にはバロック的に、そして時には頽廃的ダダイスムに描き出す。

http://www.youtube.com/watch?v=97EYMTnyZRQ&feature=related

“Je te rends ton amour”このビデオの作者はBoutonnatではありません。

 10年近く前、ミレーヌは『私はロリータ Moi…Lolita』を書き上げ、ブトナがしゃれた曲を付けたが、どうしても自分のイメージに合わないと判断し、アリゼ Alizéeを見い出して歌わせたのはつとに有名だ。アリゼという新たなアイドルの神話がそこから生まれた。
 ここにミレーヌ(あるいは/そしてコンビを組むブトナ)のたぐいまれな才能がある。自分がロリータ的な性を引き受けることができないことを自覚し、別な性、いわば娼婦的・退廃的な性に適応していることを見抜いたのだ。
 ナボコフが書いたロリータのように、アリゼはやがて子供を産む。そして健全な(?)アイドル歌手として活躍する。ミレーヌは違う。ミレーヌの進むべき道はもっと不健全だ。彼女の性は、子供をもうけ母親になる性ではない。夫婦とか家族とかへと至る凡庸な愛を表現する性ではない。男と女が性的に生きてはいるが、愛憎の起伏に沿って強弱する感情の横溢が永遠に絡み合う、そんな性だ(“Point de suture”)。

http://www.youtube.com/watch?v=VC1789fgXCg

“Point de suture”

 このようなフランス的世界を描き出すミレーヌだが、生まれはカナダだ。伝統的なフランス語はかえってカナダに残っていると聞くが、ヴェルサイユ以来の伝統的な美学も同様なのだろうか。彼女は1961年生まれと聞いている。とするなら、今49歳か。昨年は、あのワールドカップフランス大会の決勝を行ったサン・ドニのスタディアムでライブを開催し、その健在ぶりを示した。映像を見る限り、容姿の衰えなどみじんもない。まさか、夜な夜な、鉄の処女を使って生娘の血を搾り取り、血の風呂に浸かっているのではあるまいな。

http://www.youtube.com/watch?v=d7uQbOssaRk

“C'est dans l'air”Mylèneのライブ
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ポップ・フランセ | 09:32:35 | Trackback(0) | Comments(0)
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