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石田明生

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スーちゃんこと田中好子さんの美しさ
 先週、奈良に旅をした。
 と、ここまで書いて、そのまま放っておいたら、「スーちゃん」こと田中好子さんが亡くなった。55歳という、男でも女でも円熟を迎えるいわば盛りとでも言うのだろうか、そんな早すぎる、惜しまれる死だった。
 僕自身は、キャンディーズやそのヒット曲にそれほど関心があるわけではないし、スーちゃんもランちゃんもミキちゃんも見分けがつく程度で、まあどうでもよい存在だった。ただ、ほかのふたりと違って、スーちゃんは今村昌平の『黒い雨』に出演したので、ちょっと際立った存在ではあったが・・・その後は、お茶の間のテレビドラマにおさまり、いわゆるドラマ俳優レベルで終わろうとしていたし、きっと終わっていただろう。あくもなく、強烈な存在感もなく、それだけに嫌みのないおばあちゃん女優を演じ切ったかもしれない。でもそんな人生は彼女に許されなかった。僕たち部外者には知られていなかったが、乳癌を長く患い、辛い闘病生活のすえの死であったと言う。
 でも、彼女は死して敢然と光り輝いた。告別式で流れたあの感動的なメッセージは、どんな詩歌やエッセーをも超えて、聞くものの心を揺り動かしたのではないだろうか。死の床で発せられ、ひとつひとつ紡ぎ合わされた言葉の織物は、人に温かい人間になれることを、温かい人間であり続けることができることを示している。死を目前にしても好子さんは、まずは遠いところの人たち、被災地の人たちへの思いを語り、次に友人への感謝の気持ちを述べて、最期に夫君への言葉、ご自分の無念を語った。
 死後を演出しようとするナルシストの最期の演技とは到底言えない彼女のメッセージだった。そんなものではない。また、誰かに強要されたわけでも、誰かに入れ知恵を授けられたわけでもないメッセージ、推敲さえもろくにされていないメッセージだったのだろう。その訥々とした語りは、どんな詩人の朗読をも凌いだ。
 彼女は、もちろん容姿も美しいが、本当に心の美しい人だったのだ。
 冥福を祈ります。そして、あの世で被災した人たちを支援してください。
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雑感 | 09:49:12 | Trackback(0) | Comments(0)
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