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石田明生

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今年度の講義を終えて・・・映画『遠い日の家族』
 一昨日、今年度の最後の講義を無事終えることができた。
 このフランス文化の講義で、年末から年始にかけて、つまり最後の二つの時間を使い、クロ-ド・ルル-シュ監督の映画『遠い日の家族 Partir revenir』(1985年作)を見た。新年早々、ユダヤ人、密告、ゲシュタポなど暗いキーワードが支配的な映像を見せるのもどうかなと、少々ためらいもあったが、学生たちの実質的な新年は後期テストが終了してからと割り切り、断固上映に踏切った。
 私見だが、この作品はもしかするとルルーシュの最高傑作ではないかと思う。確かに『愛と悲しみのボレロ Les uns et les autres』もすぐれた映画だが、少し冗長に過ぎたのではないだろうか。その点、『遠い日の家族』は登場人物も限られていて、一見散漫に見えるテーマはラストに向かってラフマニノフの音楽と共に一点に収斂されるので理解しやすい。また、映画全体をひとつのピアノ・コンツェルトとするなら、キーとなるシ-クエンスがリフレインのように繰り返されるのも頭に入りやすくてすばらしい。
 そのためか、学生たちの評価も良いものだった。そこで今回は彼らの感想を少し紹介しようと思う。実は毎回授業ごとに感想と質問と要望を書いてもらっていた。それは今手元にあって僕の宝物だ。いずれ追々紹介するつもりだ(学生たちから許可も得ています)。


以下は1月24日に配付したプリントです。

フランス語文化
1月10日(水) 映画『遠い日の家族 Partir revenir(直訳は「出発する、戻る」つまり、「輪廻転生」)』の後半を見る。
監督:クロード・ルルーシュ

質問
*村のシーンはどこで撮られたものでしょうか?・・・わかりません。僕も知りたいです。
*来年も先生はこのクラスを担当しますか?・・・しません。
*フランスでは「アンジェラ」という名は多いのですか?・・・多いとは思えませんが、普通です。「アンジェラ」とか「アンジェリーナ」は「アンジュ(天使)のような」の意で、縁起がよい。ちなみに、彫刻家のミケランジェロは「ミカエル」と「アンジュ」の合体したもの。男はアンジェロ、女はアンジェラとなります。イタリア的な名前です。
*なんでヴァンサンは綱渡りをしているんですか?・・・僕は昔木登りをしました。なんでしたのでしょう?大人をはっとさせるため?度胸を試すため?ヒーロー感を味わうため?映画の場合、いずれにせよ、両親はそれが恐くて、精神科医に相談し、両家は親密になった。

感想ピックアップ
*サロメの詩、とても深いところに感じた。すべてを理解できないけれど、私達には感じられない様々な風にさらされ、触れられて生きているんだなぁ。
*音楽が言葉の代わりをしているような映画で、新鮮でした。
*緊迫感があり、人物どうしの内面が持つ緊張感がうまく映像に現れている。
*すごい衝撃を受けました。
*細かい部分まで作り込まれていて、とてもリアリティーを感じました。
*とても意外な密告者に驚きました。まさか・・・
*フランス映画は、人の精神的な部分や、宗教的な部分など、理性でははっきりと割り切れないようなテーマであるとか、関係を表わす映画が多い気がします。これもそうでした。
*前回見た部分と今回見た部分がちょうど「行く」と「帰る」になっていた気がして、よくできた映画だと思いました。
*それぞれの家族の的確な描き方やカット割りはすばらしく、正確で明瞭である。
*過去と現在の入れ代わりの映像を流していく手法はとても新鮮。
*美しく、華麗な音楽を中心にして、美しい映画だった。
*世の中には見たくない部分がたくさんありますが、そういった現実を直視して強く生きて行かなければ、と思いました。
*この映像の美しさ:曇りがかった天気、俳優たちの悲しみの表情、音楽、しゃれた服や小物・・・ラブシーンなんかも、アメリカの俳優達よりとても人間的で動物的で、いい。
*「恋」って素敵なことでもあり「恐い」ものでもあると感じました。
*この映画は今までのユダヤ人問題とは違った視点(密告)から描かれており、興味深い作品でした。
*とてもリアリティーのある映画でした。ドキュメンタリーを観ているようで、不思議な感じがした。
*映画に出てくる輪廻転生について考えたことがありました。

[石田]
 曇り空に目を付けた方がいましたが、いいところを見ていると思います。戦争勃発前のシーン以外、ほとんど曇りでしたね。これは、もちろん、登場人物達の内面を映し出していると思われます。
 ユダヤ人迫害ものでよくある「ユダヤ人は可哀想だ」「ナチスは残酷だ」「ユダヤ人は何も悪いことをしていないのに」「ユダヤ人に同情した」などなどのテーマの映画とは違い、この映画は、恋愛感情や家族のいびつな愛情・・・人種や宗教を越えたもの・・・から生ずる愚劣さや残酷さを描き出しています。ここには悪人など一人もいません。ドイツ兵やゲシュタポですら悪党とは言えないでしょう。しかし悲劇は起きます。そこにこの映画の普遍性があります。
 そしてちょうど1943年に死んだラフマニノフの音楽がこの映画に忘れがたい効果を発揮します。登場人物達はみんなラフマニノフに聞き惚れ、うっとりしますが、そのうちに耳につき、うんざりしていきます。もしかすると観客もそうではないでしょうか。登場人物達と体験を共有しはしないでしょうか。そうなれば、たぶん、ルルーシュ監督の術中にはまったことになるのでしょう。
 最後にオーケストラのラフマニノフで、現実のラフマニノフに戻るのです。そうです。ラフマニノフも出発し、戻るのです。

*        *        *


 フランス文化の講義に出席し、感想や質問を書いて下さり、ありがとう。ぜひこれをきっかけに、フランスの音楽、映画、文学、また教育や政治などに関心を持って下さい。
 これからお会いできなくなるかも知れませんが、僕のブログ「スキピオの夢」にいつでも遊びに来て下さい(皆さんの映画の感想を書いたこの文章をブログに載せてよろしいでしょうか?)。来年度、文化の講義を担当しなくとも、これからはブログにおいて、フランス文化を発信し続けようと思っています。これからも掲示板にご意見、感想、質問等を書いて下さい(また、HPからメール・アドレスもわかります)。
 また、パリ旅行の準備で、町の風景などご覧になりたい方は「スキピオの旅行記」を検索して下さい。ここにパリの写真と解説を載せています。これは旅行用のサイトですから、もちろん他の方々の記事も参考になると思います。
 最後に、機会がありましたら、ぜひフランスを訪れ、ご自身の目でフランス文化をご覧になって下さい。その旅の実体験から、ご感想をいただけたら望外の喜びとなるでしょう。

 以上が一昨日配付したプリントです(レポート課題等については削除しております)。
 『遠い日の家族 Partir revenir』は、ナチス占領下、医者と精神科医の二つの家族が田舎の城で暮らさざるを得ない状況下が舞台。精神科医の一家はユダヤ人なので、パリの自宅を逃れて、親友の城にかくまわれ、ニ家の共同生活が展開される。
 主人公で語り手のサロメは城主のひとり息子ヴァンサンの愛をさらりと受け流している。彼女の兄サロモン(ソロモン)は毎日毎日ラフマニノフを引き続ける。精神科医の妻サラは城から出られない逼塞した生活に爆発寸前の状態、城主の妻は毎日耳にするピアノにイライラしてノイローゼ寸前。
 その時、ヴァンサンとサロメの擬装婚約を発表して、公に城滞在を正当化しようとする。そうすれば、村人たちに怪しまれずに村内や公道を歩くことができる。そして婚約発表のパーティー・・・
 ある日突然、ドイツ兵が城にやって来て、精神科医一家四人を連行する。誰かの密告だった。
 戦後、ひとり生き残ったサロメが村に戻って来る。彼女の願いはただひとつ、密告者を知ることだった。いったい誰が密告したのだ。彼女の愛を得られないヴァンサンか?召し使いのアンナか?金もうけが好きで城を手に入れたがっていた村の食料品屋か?
 現在と過去の映像がラフマニノフの音楽が、調和し統合する。戦争直前時の両家の食事会、その幸せそうなシークェンスが繰り返される。あんなにも幸せだったのに・・・誰が密告者か?

 どうか、まだの方はご覧になって下さい。
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雑感 | 07:38:30 | Trackback(0) | Comments(0)
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