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石田明生

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映画『ルルドの泉で』を見る。
 今日、下高井戸まで足を伸ばして映画を見に行った。実は、下高井戸という駅を降りて街に出たのは初めてだ。なにしろ、今現在映画『ルルドの泉で』を上映しているのは、この街にある「下高井戸シネマ」だけだから仕方ない。映画館に到着してびっくり、今までイメージしていた映画館とはおよそ違う。

映画館
「下高井戸シネマ」これはどう見てもマンションだ。

 だが、『ルルドの泉で』のような地味な映画を上映しているということは、案外筋の通った館主なのかもしれない(中に入ってわかったが、『天井桟敷の人々』『サラの鍵』『サルトルとボーヴォワール』など営業を度外視したような作品の上映を予定していた)。さすがに下高井戸はレベルが高い。我がさいたま市とはだいぶ違うな。


 さて、映画『ルルドの泉で』(原題は単にLourdes)だが、結論から言うと、ぜひいろいろな人に見て欲しい映画だと思う。が、ハリウッド映画のような派手な作品を「洋画」と思っている人には難しいかもしれない。ストーリー性や感情、ロケイションやアクション、どれをとってもゆったりとしたカメラワークで映像化される。強烈なインパクトに慣れ親しんだ観客は物足りなさを感じるかもしれない。
 それでも、こういう何気ない演技やストーリーから、何かを感じ取れることがある。「多発性硬化症」という難病に苦しみ、両手は使えず、車椅子生活をしざるを得ない若い女性の心の動きを、彼女の片言とか目の動きとか、スプーンで運ばれた食べ物をほおばる口元とか、ほんのわずかな反応で想像してみること、じっと椅子に腰掛けたままの我々観客が一緒に疑似体験をしてみること、そんなことは決して無駄ではないだろう。
 健常者をうらやましがり、自分だけに起こった過酷な運命を呪いたくなる彼女は、聖女とはほど遠いし、信仰心もそれほど強いとは思えないが、それでももしかすると聖母マリアの恩寵と水で、奇蹟が起こり、難病から解放されるのではないか、いや解放されたいと願う。

ルルド
ルルド、映画パンフレットから

 映像は静かに、世界中から大挙してやってきた罹病者たちの群れが、孤独に苛まされた心の病を病んだ人たちが、物見遊山でできた観光客たちがルルドの大聖堂で、水浴場で、土産物屋の前で、歩き、おしゃべりし、お祈りをするシーンを描き出す。どうして神は、信仰心の厚い人を優先的に助けないのだろう。病を押して、人のために必死に尽くす聖女のようなセシル(ボランティアのリーダー格の女性、倒れて意識不明になる)に、どうして奇蹟を起こしてやらないのだろう。巡礼や観光のツアーで来た人たちは、絶えず神父にその質問をする。神父はその難問に答えざるを得ない。しかし「神の御意志の奥深さを、その配剤の計り知れなさ」を語る以外何が言えるだろう。
 映画は、やはり皮肉な結末を用意していた。奇蹟は、熱心に祈る母と共にある車いすの娘に起こらず、観光気分の巡礼ツアーで、初めてルルドにやってきたクリスチーヌに起こるからだ。夜中寝ていると、麻痺していた筈の手、足が動き、よろめきながらも歩けるようになる。彼女がベッドから真っ先に向かったのは、化粧室だった。自由になった手で最初にしたのは髪をくしけずり、耳にイヤリングをつけることだった。もしも彼女の信仰心が本当ならば、すべきことは他のことではなかったか。マリアに祈ること、感謝の祈りを捧げることではなかっただろうか。女性監督のジェシカ・ハウスナーの恐ろしい意図がここに見えるではないか。
 なんとか歩けるようになったクリスチーヌの目の前に、今まで押し殺していた夢が現れる。恋、おしゃれ、仕事・・・ルルド巡礼の最後の夜のパーティーで、彼女は好ましく思うマルタ騎士団の男性に請うて、ダンスを踊ってもらう。たどたどしく踊るクリスチーヌ、不安げに見守るツアー仲間やボランティアの人たち・・・にぎやかなダンス音楽が鳴り響くにもかかわらず、映像は静かに、こう言ってよければ水を打ったように静かにクリスチーヌの弱々しい仕草をたどる。
 奇蹟は本当だろうか。「また元に戻ったら、奇蹟とは言えないわ」とひそひそ話をする老婦人、倒れるクリスチーヌ、いや大丈夫だ、また立ち上がり、ゆっくりと歩いて踊りの中から出るクリスチーヌ、奇蹟は続いていると見せつけるかのように立ったまま踊りを見るクリスチーヌ、心配になった老女が彼女の横にそっと車椅子をもってくる、と、ついに車椅子に座り込むクリスチーヌ。誰も、恐らくは制作者たちさえも彼女のその後を知ることはないのだろう。奇跡は本当に起こったのか、あるいは一時的なものだったのか。
 主役のクリスチーヌを、映画『エディット・ピアフ』の妹分役、映画「フランソワーズ・サガン」の主役サガンのシルヴィー・テスチューがみごとに演じていた。監督は、オーストリーの女性監督、ジェシカ・ハウスナーだったが、これはやはり女性ならではの作品となった。

 映画終了が12時半頃、もちろんもう一つの楽しみは、下高井戸での昼食だ。映画館に入る前から、行く途中にあるイタリア・レストランに入ろうと決めていたが、初めての街なので、駅のまわりを一回りした。もしも、そのレストランよりも良さそうなのがあったら、ほぞを噛む。
 結局、一回りしたがまたもとのレストランに戻った。街は可もなく不可もないごくごくふつうの街に思えた。が、下高井戸シネマとこれから入るレストランがあるだけで立派だと思う。

トニーノ
レストラン「トニーノ」の外観

カップ
久々おいしいエスプレッソを飲めた。

 レストランの名前は「トニーノTonino」、ランチは前菜・メインとコーヒーで1300円なりだった。高田馬場の「ラミティエ」のランチは前菜・メインで1200だった。多分ボリュームは「ラミティエ」のほうがまさっているだろう。が、コーヒーをつけるとたぶん値段は上回るか。
 ここの前菜は、ハムのサラダかポタージュスープ、メインはスパッゲッティーか何種類かのピッツァを選ぶ。ふたりではいったので、これらをすべて食べてみたが、味はどちらかというとさっぱりしていて、上品だった。塩をふりたくなるのをぐっとこらえて食べていると、じわじわおいしさがわかってくる。店内の雰囲気もよい。
 目は花粉でやられたが、まあまあ実りある一日だった。
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雑感 | 23:27:57 | Trackback(0) | Comments(0)
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