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石田明生

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壮絶な恋物語『トリスタンとイズー』
 講義の準備で、『トリスタンとイズー』の物語を読み返してみた。これは言うまでもなく、『アーサー王』につながる、ケルトの物語だ。現在のウェールズ、インゴランド、アイルランド、ブルターニュを舞台に展開される。
 主人公のトリスタンは、ローヌア王の子として(現在のウェールズと思われる)生まれるが、そのときすでに父はなく、母も彼を生むとすぐに他界する。まさに「悲しみの子(トリスタン)」という名にふさわしい出生だ。しかし、義人ゴルヴナルのもと、武芸一般を身に付け、立派な若者に成長する。ひょんなことで、伯父のマルク王のいるコーンウォールの城にたどり着いたトリスタンは、この国の民が悲しみにうちひしがれているのを目の当たりにする。

ミュージカル『トリスタンとイズー』の中で歌われた Je peux mourir pour être à toi をYouTubeで聴いてください。これは1982年のドイツ映画に歌を合わせたものです。

http://www.youtube.com/watch?v=6kKJzxM_4rc



 それは、アイルランドの王が五年ごとに少年・少女を三百人ずつ差し出せという理不尽な要求を突きつけてきたからだった。文句があるなら、使者としてきているアイルランド王の義弟モルホルトと勝負せよと言っている。マルク王の重臣たちで強力無双の彼に立ち向かえるものはだれひとりいない。
 それを聞いたトリスタンは、王にモルホルトとの決闘を申し出る。こうして、離れ小島で彼は巨人と戦い、剣でモルホルトの頭蓋を貫き勝利する。が、トリスタンも相手の剣に塗られた毒で重傷を負う。彼は毒のため悪臭を放つ病に襲われ、医師たちにも見放されるのを見て、ひとり船に乗り、海に流してもらう。
 風と波に漂いながら、トリスタンはいつの間にかアイルランドにたどり着く。その地で、呪術的な力を持つ女王と娘のイズー(母娘ともに同じ名)の治療によって、トリスタンの病は癒え、マルク王の元に帰ることができた。
 ところでマルク王には子がないので、王は救国の英雄であり、可愛い甥のトリスタンを跡継ぎにしようとしていた。このことが、王の側近たちの嫉妬をあおることになる。彼らに子をなすことを勧められた王は、二羽のツバメがくわえてきた美しい金髪の持ち主となら、結婚してもよいと宣言する。言わば、不可能を要求し、婉曲的に結婚を避けようとしたのだ。が、トリスタンにはその金髪に見覚えがあった。その金髪の持ち主は、生死の境の彼を救ったイズー姫に他ならない。彼は必ずや王のために姫を連れてくると約束する。
 こうして、トリスタンは花嫁を迎えるためにアイルランドに再度赴く。
 ところが、この国は前代未聞の災難に襲われて、意気消沈しているありさまだった。聞くと、、巨大な龍に荒らされて困っていたのだ。王は、その龍を退治したものに娘のイズーを与えると約束している。トリスタンはさっそく龍を退治するが、自身もその毒の息にあてられ、重体になる。こうして再びイズーの手当を受けることになる。その時、イズーは彼の剣の刃こぼれを見て、その剣こそ叔父モルホルトを殺したものと確信し、仇を討とうとするが果たせない。むしろ魅かれてしまうのだ。
 王との約束通り、トリスタンはイズーを手に入れ、アイルランドをあとにして、コーンウォールに向かう。途中、彼らはひどいのどの渇きに襲われ、次女のブランジアンから飲み物をもらって二人で飲み干す。ところがこの飲み物こそ、イズーの母親が娘のためにこしらえた愛の媚薬だったのだ。マルク王とともに飲めば、生涯愛し合え、幸せな宮廷生活をおくれる。だが今や、イズーはトリスタンと愛を交わすことになった。
 命令に背けない忠義のトリスタンは、最愛のイズーを王に差し出す。イズーは王と結婚する。
 初夜の晩は、処女の次女ブランジアンが代わりに王としとねをともにして、とりつくろう。トリスタンとイズーはひそかな恋を続けるのだが、結局は王の知れるところとなり、死罪を申し付けられることになる。トリスタンは策を用いて逃れるが、イズーはレプラ患者のなかに入れられる。トリスタンは義人ゴルヴナルとともに、そこからイズーを救い出し、森に逃れて、隠れ住む。
 二年という歳月が経ち、二人の住まいも王の知れるところとなり、二人は王と和解し、イズーは妃にもどり、トリスタンは、国を出てブルターニュに行く。
 ブルターニュでトリスタンは手柄を立て、そこの王女《白い手のイズー》と結婚する。が、《金髪のイズー》の思い出から逃れることができず、真の夫婦になることができない。
 そうこうするうちに、トリスタンは《白い手のイズー》の兄を助けて敵と戦うも、三たび敵の毒をうけて、三たび瀕死の重傷を負う。この傷を治せるのは《金髪のイズー》しかいないことを知るトリスタンは、義兄のカエルダンにコーンウォールに行き、《金髪のイズー》を連れてきてくれるように頼む。もし、《金髪のイズー》を連れてくることができたなら白い帆を、失敗したなら黒い帆を上げて,沖合から合図してくれるように約束する。
 《白い手のイズー》の看病をうけながら、《金髪のイズー》を待つトリスタンのもとに、船の帰還が知らされる。船は高々と白い帆を上げている。しかし、病床のトリスタンにはそれは見えない。彼は傍らの《白い手のイズー》に尋ねる。『帆の色は?』
 このとき嫉妬に駆られた《白い手のイズー》は嘘をつく。

 「わたしのしかと見た色は、まっ黒い帆だと、思し召せ!」
トリスタンは壁のほうにむきなおり、
 「この上は、生きる力もなくなった!」
それから、三度、
 「イズーよ、恋人よ」とくりかえすと、四度目に魂を天に還した。(『トリスタン・イズー物語』岩波文庫 佐藤輝夫訳)

 恋人の死に間に合わなかった《金髪のイズー》は、

 トリスタンの遺骸のそばに身を横たえ、口と顔とにくちづけると、からだとからだ、口と口を合わし、しっかりと遺骸を抱きしめて、魂を天に還し、恋人を痛む悲しみのあまり、そのかたわらで死んでいった。(同上)

 二人の遺体は、コーンウォールに戻され、墓に入れられる。すると、トリスタンの墓から花香る茨が伸びて、イズーの墓まで達する。切っても切っても、伸びていくので、マルク王は死してなお結びつこうとする魂の叫びに感じ入り、そのままにすることを命じたと言う。
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文学雑感 | 05:02:13 | Trackback(0) | Comments(0)
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