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石田明生

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ストラスブール二日目
 ストラスブール二日目、朝一番で駅まで散歩する。午後コルマールに行く予定なので、その切符を購入することと、予約してあった切符を、なんと言えばいいのだろう、「プリントアウトする」とでも言えばいいのだろうか。なにしろ日本ではしたことがないので、呼び方がわからない。駅に人の頭くらいの大きさの黄色い機械が立っている。それに予約した切符のパスワード押し、予約した時のビザカードを挿入して暗証番号を押すと、購入したい切符が印刷されて出てくる。この切符は、いわゆるキャンセル可能な切符なのだ(だから「予約」という表現をした)。対して、自宅で印刷してしまうEチケットは、そのまま列車に乗れるが、キャンセルができない。
 ただし、駅でプリントアウトした切符は、普通の切符と同様だから、コンポステしないといけない。面倒なので、先の切符まで購入してしまった。だから、キャンセルや遺失のことを考えると、乗る前日に購入したほうがリスクが少なくていいのだが・・・全部でひとり4・5枚の切符を持ち歩くことになった。

Strasbourg 駅
ストラスブール駅
ストラスブールはEUの議会があるので、加盟国の旗が立っている。
ミラー・ボールのような外観に朝日が反射して美しい。




 日曜の朝だからだろうか、昨日の観光客の群れはなく、通りは静かで、気温も心地よく清々しい。

朝のGrande rue
駅から旧市街に伸びる、歩行者専用のメインストリート、
その名も Grand rue と言う。あさの掃除が終わったばかりなのか、ゴミひとつ落ちていない。


 今日の観光の第一は、元気なうちに大聖堂にのぼること。なにしろ、屋上まで続く螺旋階段は300段以上あるのだ。約10階建てのビルに相当する。ただし、ビルの階段は広々しているが、この手の螺旋階段は狭くて暗い。日曜の朝のため空いていて本当に良かった。混んでいると、下から次々と元気のいい若者がのぼってくる。すると、ついついつられて無理をしてしまう。とにかく、何とか屋上に出ることができた。僕が大汗をかき、ハアハアしていると、係の人が、ダイジヨウブかと心配してくれた。まったく、歳とともに自分の体が重くなる。
 屋上からの眺めが、体の重さを忘れさせてくれた。ストラスブールの町が、美しい赤色の屋根瓦の町が眼下に広がっている。

ストラスブール 西          ストラスブール 東
大聖堂は東向きに建てられているので、この屋上から東西を見渡すことができる。
左の写真が西側ファサード側で、右が東側、ということは遠くの山はドイツ領の「黒い森」に連なる山か。


 また、南側真下には「ロアン宮殿」が見えた。

ロアン宮殿
南側ファサードは残念ながら修復中だった。本来ならこの入り口に「エクレシア」と「シナゴーグ」の像が見えたはずだ。
隣の「ロアン宮殿」はどっしりとしていて、いかにもこの町の有力貴族の邸宅にふさわしい。現在は美術館になっている(次の見学先)。


エクレシア                シナゴーグ
エクレシアとシナゴーグ(前日見学した美術館 L'oeuvre de Notre-Dame 所蔵)
エクレシアとは、フランス語の église と同じ語源で、キリストの教会を表す。正しき者の意味。
右手で十字架を持ち、左手で聖杯を持つ。
対して、シナゴーグはユダヤ教の悪しき者で、右手で折れた槍を持ち、右手で立法の書を持つ。
また、両岸は目隠しをされている。
この美術館にある2体は本物で、南側ファサードにあるのはレプリカだ。

 この2体の像を見ても、対比は明らかで、きわめて教訓的だ。これは、この大聖堂の大きな特徴と言えるのではないだろうか。というのも、前日の旅行記で紹介した「誘惑者と愚かな娘達」(本物)も、大聖堂の西側ファサードにそのレプリカがあるが、それによって、民衆に、とくに町の娘達に貞潔を説いているのはあからさまだ。屋上から降りて、大聖堂の彫像群をあらためて観察した。
 ファサード左側の入り口には、「美徳と悪徳 La vertu et le vice」を表した、4体ずつの彫像がある。美徳を表象する8人の乙女達が悪徳を表象する人物を踏みつけ、とどめを刺しているのだ。この美徳と悪徳の戦いは、エミール・マールの『ゴシックの図像学』によると、キリスト教初期から表れたもので、ロマネスクの時代には、ゴチック時代以上にドラマチックな戦いの様子が彫刻されていたと言う。このストラスブールの「美徳と悪徳」は戦いがすみ、美徳達がゆっくりととどめを刺している。エミール・マールはランの大聖堂の「美徳と悪徳」たちの名前をあげているが、ストラスブールのも同じ、あるいは近いものであろう。
「思慮」と「愚鈍」La sagesse et la stupidité 「貞節」と「淫蕩」La fidélité et la débauche 「忍耐」と「憤怒」La patience et la colère 「愛徳」と「貧窮」La charité et la pauvreté 「信仰」と「偶像崇拝」La croyance et l'idoratrie 「謙遜」と「傲慢」La modestie et l'arrogance 「寛容」と「暴力」La tolérance et la violence 「寛大」と「貪欲」L'indulgence et l'avidité (注 : フランス語表記は原書通りかどうか心もとない。というのは、僕が日本語からフランス語にしたからだ。いくつかは正しいと思う。問題は、これらの単語がすべて女性名詞であることを示したかったのだ)。

美徳が悪徳を退治する 1           美徳が悪徳を退治する 2
西側ファサードの左側入り口の彫刻群。キリスト教支配とともに、道徳の教化に努めたことがよくわかる。
右側の乙女達には槍がないが、本来は持っていた筈だ。


 碩学エミール・マールではないが、大聖堂の表象を読み解くのは難解だ。美徳と悪徳の戦いというテーマならば、古代ギリシャからのものであったろうし、原始キリスト教時代からの関心ごとでもあったであろう。素人の身である僕は、結局は眺めて、その美に心打たれるだけだが、このように少しばかりでも専門書をひも解くと、中世の人たちの精神性にほんのわずかでも近づけるような気がする。彼らはまさにここで彫刻を作り,大衆はそれを見て感心して、教会の教えるところを理解していったのだろう。すり減った石畳や石段が、その大衆達の会話を今に伝えているようだ。
 その石畳を踏みしめて、堂内に入る。今日は日曜なのでミサをしている。実はそのために、ここにある有名な「天文時計」を見学することができなかったのだ。

天文時計                       大聖堂内 ストラスブール
日曜日でなければ、正午12時にこの天文時計が宇宙と聖書の世界を機械仕掛けで描き出した筈なのだが・・・(壊れてなければ)
西側のバラ窓


 ストラスブールの最後は、ロアン宮殿の美術館見学だ。この美術館もご多分にもれず、各時代の芸術品が目白押しで、あまりに多くの作品数に、げんなりするほどだ。そのなかで、有名な聖書の物語を題材にした「ロトと娘達」の絵を紹介しよう。

ロトと娘達
17世紀の画家Simon Vouet(シモン・ヴーエ 1590-1649)の作

 「ロトと娘達」の話は旧約聖書に登場する(創世記19-30)。とても有名なので、ご存知の人も多いと思うが、おもしろいのであえて紹介してみよう。
 ロトは太祖アブラハムの甥で、あの有名なソドムに住んでいた。ある時この呪われた町に天使がやって来て、悪徳故に町を滅ぼすと言う。正しい人はロトと妻、それに二人の娘しかいなかった。そこで天使は、その4人だけを助けて、他の者は町とともに滅ぼした。ロトら4人は町から逃れたが、「振り返ってはいけない」という天使の言葉に背き、ロトの妻は振り返ったために、塩の柱となる。
 さて、助かったロトと二人の娘達だったが、たった三人暮らしだったので、姉は妹に言った。

「父も年老いてきました。この辺りには、世のしきたりに従って、わたしたちのところへ来てくれる男の人はいません。さあ、父にぶどう酒を飲ませ、床を共にし、父から子種をうけましょう。」
 娘たちはその夜、父親にぶどう酒を飲ませ、姉がまず、父親のところに入って寝た。父親は娘が寝に来たのも立ち去ったのも気がつかなかった。(新共同訳聖書)

 こうして二人の娘は父の子を身ごもった。姉は男の子を産み、モアブ(父親より)と名付けた。今日のモアブ人の先祖となり、妹の子は、ペン・アミ(わたしの肉親の子)と名付けられ、アンモン人の先祖となった、と結ばれる。
 この近親相姦の話はよほど後世の画家たちの創作意欲をかき立てたのだろう。いろいろな画家が描いている。ヴーエの絵は、父親ロトはきわめて平凡な男として描かれ、姉娘だろうか、彼女はきわめて大胆なポーズをとる。それにしても、ロトはいくら酔っていたとはいえ、・・・

 昼食は、急いでケバブを食べて、コルマール行きの列車に乗った。
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2013年フランス旅行 | 17:49:05 | Trackback(0) | Comments(0)
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