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石田明生

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もうひとつの Belle ・・・映画
 この度のフランス旅行の機内で映画を4本見たと言ったが、そのうち2本を紹介した。残りの2本のうち1本は生まれて初めて見た韓国映画で、題名は忘れたが、猛烈なアクションものだった。カーチェイス、銃撃戦、格闘、なんでもあれで、おそらくはその主役の俳優は有名な人だったのだろう。が残念ながら、覚えていない。
 もう1本はイギリス映画で、原題はこれまた「Belle」(2013年)だった。もっとも今度のベルは犬やペットではなく、17世紀に実在したDido Elizabeth Belleという(注1)、アフリカ系奴隷の女性とイギリス貴族との間に生まれた混血の女性の名前である。映画のテーマは、18世紀が舞台であることから、用意に察しがつくように、奴隷問題、人種差別問題である。彼女は実在の人物で、その存在そのものが、以上のテーマを十分投げかけるものであった。名門マンスフィールド伯爵家に置ける彼女の地位、立場、たとえ伯爵家の血を引いていても、それはきわめて困難なものであった。




 そんな中、ある訴訟が起こる。彼女の父親の叔父であり、実質的な父親代わりのマンスフィールド卿は、主席判事でもあったので、否応なくその問題に直面せざるを得なくなる。
 
 ある奴隷船が、難破の危機を逃れるためにその積み荷の一部を海に放擲したが、保険会社にその積み荷の損害を保証して欲しいと願い出た。すると、保険会社は、その捨てられた積み荷・・・なんとそれは奴隷たちだった !・・・は、全て傷んだもの、つまりアメリカまで生きてたどり着けそうにもない病人の奴隷だったのだから商品価値はなく、保険金を出すことはできないと返答してきた。
 そういう訴訟事件だが、やはり知識では奴隷船の酷さは知っていても、いざ、映画であれ目の当たりにすると、遣り切れない思いになる。これはひとりイギリスだけの話ではない。もちろんフランスでも事情は同様だったであろう。このたび、オンフルールという美しい港町に行ったが、この港町も奴隷貿易で栄えたことがあると読んだことがある。フランスの大西洋側の港町は多分たいていはそうだったのだろう。フランスでは、18世紀末フランス革命に際して初めて奴隷禁止令が出るが、その後ナポレオンによって、禁止令は無効となる。物の本によると、マルチニック出身の妻ジョゼフィーヌに配慮したとある(注2)。
 さて、映画だが、その混血のダイドは、教育を受けたので、そういう問題に敏感になり、父親代わりの伯爵と衝突したり、奴隷の人権を守ろうとする弁護士に恋心を覚えたり、ついには姉妹のような従姉妹ともぶつかり傷つく・・・
 この映画はイギリスものなのですぐにも公開されるだろう。なかなかの佳品だ。ちなみに、ベルとは奴隷だった母親の名前だそうで、全くその人生についてはわかっていない(と、Wikiにある)。

注1 : 映画を見て、彼女の名前がDidoということに軽くショックを受けた。というのも、その名前は、ウェルギリウスのローマ建国の叙事詩「アイネイアス」に登場するカルタゴの女王の名前だからだ。トロイの王子アイネイアスは、トロイ滅亡から逃れて、一族とともにカルタゴに到着する。カルタゴの女王ディドーは、トロイの王子に恋をするが、アイネイアスは神の命により彼女を打ち捨ててイタリーに旅立つ。捨てられた誇り高き女王は、自らに剣を突き立てて果てる。
 映画を見た瞬間、この名前はストーリーの伏線かと思ったが、wikiで調べると、Didoとは本名であり、彼女は自殺もしていない。考え過ぎだったようだ。
 しかし、小説「ロビンソン・クルーソー」でもそうだったが・・・小説では金曜日にやってきたインディオの少年を「フライデー」と名付けてキリスト教の名前を付けなかったのと同様・・・、Didoの父親も、やはり黒人の奴隷女との娘にキリスト教の名前をつけることがはばかられたのだろうか(同じ18世紀)。

注2 : フランスにおける奴隷廃止令は、一時的に適用されたが(1794-1802)、上の事情で遅れて、二月革命による第二共和制下、1848年になる。イギリスは1833年、アメリカ合衆国はご存知のように1865年、アメリカ大陸の他の国々(ブラジルを除く)はだいたい19世紀初頭だから、合衆国の場合はだいぶ遅くなったと言わざるを得ない。
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映画評 | 05:35:22 | Trackback(0) | Comments(0)
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