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石田明生

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短慮な普遍化
 昨日投書欄に『表現の自由は全てに優先か』というタイトルで、臨床検査技師のSという人が、フランス週刊誌の襲撃事件に関連して、フランス人の自由への思い入れに「傲慢さ」を感じると意見を述べていた。たぶん、Charlie hebdo の風刺画を想定しての意見だと思う。
 「フランスでは表現や言論の自由が民主主義の根幹であり、すべてに優先するかのような国民性を持ち、他者への配慮という感情が欠如しているかのように見える」とS氏は書いているが、これは、Charlie hebdo という雑誌に対していうべき意見であり、フランス人一般にすり替えることは短慮というほかない。Charlie hebdo という雑誌が「他者への配慮という感情を欠如」していると主張するのならば、それなりに納得はできるのだが、それを、まるでフランス人がこぞって Charlie hebdo を読み、風刺を楽しんでいるかのように、フランス全体に普遍化するのはどう考えてもおかしい。
 襲撃されたあと Charlie hebdo がまたもやムハマッドらしき人物に「JE SUIS CHARLIE」と言わせている風刺画を掲載したことを念頭に言っているのだろうが、オランド大統領が表明したように、「政府が掲載禁止」を強制することは不可能だ。それこそ表現の自由に対する官憲の介入であり、恐らく裁判沙汰になるだろう。そんなことは政府としてはできるわけがない。S氏がちょっと頭を働かせれば、日本でもそのような風刺画どころか、どんな表現も(わいせつ等はのぞいて)「掲載禁止措置」にすることは不可能だということがわかる筈だ。「禁止命令」を出せば、日本でも当然同様に裁判沙汰となるだろう。


 噂によれば、国連の人権委員会(と言うかどうかわからないが、そんなようなところ)から、日本におけるヘイトスピーチが問題とされ、国として禁止したらどうだろうかと提案されたことがあるらしい。それに対して、「言論の自由」を盾に、政府はその提案を受け入れていない。これからさらに議論が深まれば、どうなるかわからないが、この政府の態度は、まさに日本において言論の自由がどれほど重んじられているかを証明しているではないか。このように「言論の自由」がある国にいて僕は仕合せだ。しかし、ヘイトスピーチをいつもがなり立てられている人たちは、いくら言論の自由だからと言っても、マイノリティーの心に対して配慮が足りないのではないか、と思っているかもしれない。それとも、さらに不満が昂じて、S氏のような思考回路を通して、日本人全体がマイノリティーに対して嫌悪感を抱いているのではないかと疑念を持つに至っているだろうか。もしそうなら残念なことだが、そのようなすり替えは絶対にないと信じたい。ヘイトスピーチをするのは一部のものであり、大部分の日本人もヘイトスピーチを嫌悪していると熟知しておられる筈だ。
 Charlie hebdo の風刺の対象は、以前にも書いたが、決してイスラムだけを槍玉に挙げているわけではない。それでは政府として禁止にすることは絶対に不可能だ。また、オランド大統領や閣僚たち、フランスの一般の人たち、皆が皆 Charlie hebdo という雑誌を好んでいるわけでもない。この事件が起こる前は、たった3万部しか売れていなかった雑誌だ(襲撃後の雑誌は何百万部と売れたが、それは襲撃によって有名になり皆記念号となる筈の雑誌を買いたがったからだ)。
 この、S氏のような軽率なすり替え(もしくは錯覚)は、実をいうときわめて由々しいものだ。今現在、イスラム国の卑劣きわまりない人質事件がマスコミを賑わしているが、深慮と節度を持つ大半の人たちは、「イスラム過激派が、たとえ«イスラム»を名乗っていても、一般のイスラム教の人たちとは無縁」であることは十分承知している。ある特定の一団を見て、そこに全体を見るという愚は絶対におかしてはならない。
 S氏は「臨床検査技師」で64歳だ。年齢からしても、多分職業からしても、短慮に陥りやすい環境にあるとは思えないのだが・・・ 怖いのは、むしろそういう人物が新聞の投書欄で堂々と浅薄な意見を露呈することだ。深慮と節度のない人はすぐに尻馬に乗ってしまうからだ。だからといって、新聞に掲載するなとは言わない。言論の自由は何事にも代え難い人間の権利だから。
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オピニオン | 10:51:35 | Trackback(0) | Comments(0)
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