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石田明生

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今年の顔になるか、高貴なエリート
 年末から年始にかけて、「2015年が良い年になりますように」という年賀状を、いつまでも若い旧友やかつての教え子たちの顔を思い浮かべながら、何枚書いただろうか。そのとき、今年の1月がこんなかたちで始まるとは思いもよらなかった。パリでの新聞社襲撃事件、スーパー立てこもり事件、それだけでも十分忌まわしいのに、その後間もなく日本人人質事件が続き日本もテロの標的にされて、結局は最悪の結末を迎えて事件そのものは終結した。だが、その間も、リビア、シナイ半島、パキスタンで恐ろしいテロ事件が続発したことも忘れてはならない。この血塗られた1月を演出したのは他でもない「ISIL(イスラム国)」もしくはそれを支援あるいはそこと競り合いする過激なテロ組織だ。これらの組織はまだ健在だから、これからどんな行動をとるか予断を許さない。
 後期試験が終わり、一息ついたところでもあったので、その間テレビ報道に釘付けになってしまった。2001年の9.11やイラク戦争のときもそうだったが、このような大事件が起こると、テレビのニュース番組にさまざまな評論家や学者・専門家が、まるで雨後のタケノコのように大挙して出演し、知識を開陳し持論を展開する。彼らはいわば、お茶の間の顔にさえなる。もしかしたら、どこかで人気投票やケチのつけ合いが行われているかもしれない。それどころか、かつてのオウム真理教のときのように、こういう解説者・評論家たちの中から国会議員が登場するかもしれない。


 ところで、そんな解説者の中でこの度やたら目につくのが(ひとり昼食をとりながら、TBSの正午のニュース番組「ひるおび」を見るせいかもしれないが)、宮家という人だ。まず名字にびっくりする。「ミヤケさん」と呼ばれているので油断していると(というのもミヤケと言えば「三宅」という漢字しか浮かばない貧しい脳みそなので)、「宮家」と字幕で紹介されたからだ。えっ、そんな名字あるのか !!!
 その宮家さん、相貌はどこか神職にでもついているかのように顔色は白く肌の色つやがよく、昔をたどればお公家の出ではないかと思わせる(武州の百姓出とはえらい違いだ)。ご専門は、当然シリア辺りのアラブ諸国でアラビア語が堪能だそうだ。ちなみに北京にも滞在していたそうで中国語にも精通している。さすがエリートだ。
 そのエリートは、アメリカも好きらしい。というのは、フランスの移民対策の脆弱さについて発言しているときに、「アメリカにはアメリカンドリームがあるではないですか。フランスにはフランチドリームはありません」と、にやりとしたからだ。いやー、久々「アメリカンドリーム」という言葉をきいた。21世紀になってアメリカンドリームという言葉を使ってアメリカを語る人をあまり聞いたことがないが、そういう人はだいたいアメリカ好きだと思ってよい。ピケティーさんを持ち出すまでもなく、ウォール街辺りで超富裕層1%がアメリカのほとんど全資産を所有していることへの反発が聞かれる昨今、アメリカンドリームとは・・・いやはや。
 そのあと、司会の恵さんが、ジダンの写真が張られたパネルをかざすと、アメリカ好きの神主のようなエリートは、「フランスでは移民の子で有名になったのがサッカー選手だけだとは情けない !!!」と慨嘆した。
 育ちの良さそうなこのエリートは、こう発言することで二重の過ちをしたのだ。ひとつは、サッカー選手を見下していることを露呈し、もうひとつは、フランスについて何も知らないこと(あるいは、知らない振りする意地悪さ)を露呈した。フランスに来たマグレブ移民の子で、有名になった人といったら、すぐにラシダ・ダチ元司法大臣が浮かぶ。サルコジ大統領の時代(21世紀に入ってのことで昔のことではない。彼女は今でも話題を振りまいている)に、司法大臣に抜擢され、職についているときに子供を出産、インタビューで、父親の名を明かさなかったことでも有名だ。以前、このブログで取り上げたことがある。彼女の父親は、モロッコの石工で、母親はアルジェリア人だ。
 外務畑で働いていた超エリートが、そのことを知らない筈がない。ということはわざと言わなかったのか。そこに悪意があったのかなかったのか。
 アラブ系の移民の人たちの中にはもちろん、医者や弁護士、芸術家や文化人など数多くいることは言うまでもない。吐き捨てるように「サッカー選手だけとは情けない」と言ったエリートは、お茶の間にどれほどの誤解を与えたことか。また、そのあと番組では移民の子の苦しさ、悲惨さを伝えるものとして映画『憎しみ』(カソヴィツ監督)の一場面を流していた。この映画は僕も学生たちに、パリ郊外の移民の子供たちが抱く憎悪、悲惨を見せるためにしばしば紹介している。番組では映像を流したままで終わった。が、もしもそこに立ち会った識者(ここでは宮家)がフランスを嫌っていなかったら、その『憎しみ』という映画を作った監督は、あの『アメリー』という映画の中でアメリーが好きになる青年だとコメントしたであろう。つまり、サルコジ大統領同様ハンガリー出身の父親とフランス人の母親の間に生まれたフランス人がその映画を作ったのだと(フランス人は人種の混合から成り立っているからこのような混血は普通)。
 さすがのエリートも、フランス映画については無知だったのかもしれない。が、それにしても紹介される映画について下調べをして来るのが常識ではないかと思うが、どうだろう。
 今日もまた、お昼のニュースにお公家のようなエリートが出演していた。隣にすわっているゲストの評論家・専門家諸氏がなんだか貧相にすら見えるから不思議だ。今日の問題は、途中から見たのでよくわからないが、多分ヨルダン兵士の処刑(なんということだ、生きたまま焼き殺されたらしい)のニュースを受けてのことだろう。
 それよりも気になるのは、TBSのそのニュース番組では触れられなかったが、ISILがフランスにいる自分たちのシンパに向かって、フランスの警察官・兵士を殺害するよう、神が命令したと発表したことだ。これについて詳しいことを知りたくて、結局「ひるおび」のイスラム関係のニュースをずっと見てしまった。つまり、高貴な方のご尊顔をずっと拝してしまったということだ。
 (神の名を出しての攻撃命令とは、気になるニュースだ。本当にそんなことになれば、移民排斥を叫ぶ右翼に格好のバックボーンを与えることになる。フランスを形作っている、様々な人種・民族の同化という価値観や寛容精神が失われてしまう。しかしこれはまた別の話)
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雑感 | 18:39:59 | Trackback(0) | Comments(0)
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