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石田明生

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映画『パリよ永遠に』(シュレンドルフ監督)
 今日、大震災追悼の日に映画を見に行った。『パリよ永遠に』という邦題だけを見ると、何の映画かさっぱり見当がつかないかもしれないが、原題 «Diplomacie (駆け引き、外交的手段)»を知っていると話はだいぶ違ってくる。少なくともラヴストーリーではなさそうだし、パリの観光映画でもなさそうだ。
 時代と日にちは1944年8月24日から25日にかけての二日間、場所はほとんどリボリ通りにあるドイツ軍司令部のコルティッツ将軍の部屋に限られ、ストーリーは最初から最後までパリを爆破するかどうかの二者択一の苦しみに終止する。まるで、三単一の規則(règle des trois unités)にのっとった古典劇を見ているようだ。いや、監督は完全に古典劇を意識しているのだ。パリが廃墟になるか、生き残るか。何十万というパリッ子たちの死体が瓦礫とともに埋もれるか否か。まさにラシーヌの古典劇にふさわしい。
 第二次大戦末期、パリ陥落の直前、コルティッツ将軍はヒットラーからパリを爆破し、完全に廃墟にせよと命令を受けている。命令を実行せんと、将軍は、部下に重要拠点に爆弾を仕掛けさせ、準備万端整えてあとは命令を与えるだけと煙草を吹かしながら、夜明け前のパリを眺めている。そこに、忽然とスエーデン領事のノルドリングが将軍の部屋に現れる。


 驚く将軍に、この執務室がナポレオン三世の愛人の部屋で、皇帝は愛人に秘密の扉を通って会いに来たと語り、隠し扉の存在を教える。領事はそこから入ってきたのだ。スエーデンは中立国なのでドイツに敵対していない。領事は、将軍にパリの破壊を思いとどめようと説得しに来たのだ。ここで、領事ノルドリングのしたたかな「駆け引き」が展開される。コルティッツも彼を強圧的に排除しようとしない。どこかで、このとんでもない命令を回避したい思いがあったに違いない。しかし、それができない。妻子が人質に取られているのと同様の状態にいる、つまりヒットラーは将軍などの指揮官の裏切りや怠慢を恐れて、もしもの場合その妻子を処刑すると契約を交わさせていたのだ。
 「妻子を犠牲にして見知らぬパリの連中を助けるか。それとも逆のことをするか」説得する領事におのれの問いを突きつける絶体絶命の将軍、その問いに「わかりません」としか答えることのできない領事。まさにこれは完全な古典劇だ。
 史実に基づくこのストーリーは、ご存知のようにコルティッツ将軍はパリを破壊しなかった将軍として、その名を歴史に残す。では将軍の妻子たちはどうだったのだろうか? 領事は自ら救うと約束していたが、その気はなかったようだ。それが題名の由来なのだろう。妻子たちも、ヒットラーの毒牙を逃れたとエンディングのテロップで流れたときには、思わずほっとした。
 当時のフィルムを交えた映像は美しく、さすがシュレンドルフ作品だ。
 驚いたことに、田舎の映画館で見たせいだろうか、観客は僕を入れて3人だった。これだから、こういう良い映画が上映されなくなってしまうのだな。という感想よりも、13:30始まりの映画なので、僕のような暇人は世の中にあまりいないのだなと言ったほうがよいかもしれない。
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雑感 | 18:04:38 | Trackback(0) | Comments(0)
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