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映画『禁じられた歌声』を見る。
 暮れの年中行事、大掃除の合間をぬって、映画を見てきた。前から気になっていた『禁じられた歌声』というマリ共和国のティンブクトゥが舞台の作品だ(原題は『ティンブクトゥ』という)。 
 フランスとモーリタリア合作で、監督は、アブデラマン・シサコという。
 世界遺産でもある美しい町、ティンブクトゥをジハーディストたちが占領し、古いイスラム法のもと町を支配する。過激派の支配は、服装や歌やスポーツなど庶民の生活を一変させるまでに至る。愛し合って同棲生活をしていたカップルは、神の赦しを経ずに結婚した廉で石打の刑にあい、絶命する。家で仲間と歌を歌っていた婦人は40回の鞭打ち刑を受ける。美しい世界遺産を背景とした画面は、恐怖が蔓延する不条理世界に一変する。そんな状況下、町の郊外で平和に牛飼いをしている父、母、少女トヤの三人家族がクローズアップアップされる。

少女トヤの家族
左から母サティマ、父ギダン、娘トヤ・・・砂漠の平穏な家庭も時代と無関係ではいられない。



 この映画に、もしもストーリーがあるとしたら、この家族の営みだろう。彼らは、牛を飼い、砂漠でのんびりとテント生活をし、将来の願望は同じように娘が婿をとって牛飼いをしてくれることだけだ。ところが、そんな平凡な暮らしの中に落とし穴があった。父親が、ひょんなことでひとりの漁師を事故死させてしまう。ジハーディストたちと無縁の生活をしていたのだが、彼は裁判のために彼らと否が応でも関わることになり、平穏な砂漠の生活は悲劇の様相を帯びる。

 この作品は、観客に媚びることなく、あくまでも凛とした映像を保ちつつ、深い不条理性を表現している。その秘訣は、安易に悪役と設定したくなるジハーディストたちの一人一人を決して酷薄な人相に描かず、横暴に振舞わせないことにある。彼らは、彼らなりに、ひたすら掟に従って、任務を遂行しているだけだ。それが怖い。悪代官も化け物も登場しない。銃を持った男たちが町を巡回し、恐怖を充満させる。その不条理性はフランツ・カフカの小説世界(例えば『審判』)に横たわるそれだ。
 ジハーディストとの戦いは、かつての帝国主義的戦争やイデオロギーの闘争とは違って、狂信との戦いだ。2016年も、彼らから見ると神をも恐れぬ、信仰不在の国々(フランスや日本など先進諸国)にとって、油断のできない怖い年であり続けるだろう。
 
 疑問点: 登場人物たちは、たびたび携帯電話で話をしていたが、その電源はどこから来ているのだろう。特に、砂漠でテント暮らしをしている主人公の家族は、どうしているのか。やはり、電池による充電器があると考えるべきか。それとも街で充電しているのか。砂漠の多い国に暮らす人たちにとって携帯電話は大変便利であることがわかった。固定電話のようにケーブルを設置する必要がないからだ(砂漠で電話線を敷設することは困難だ)。
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映画評 | 17:49:58 | Trackback(0) | Comments(0)
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