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広島中3自殺について(補足) 
 毎日新聞の朝刊に昨日から『緊急報告』というタイトルで、広島中3自殺についてコラムが掲載されている。昨日の「上」に続いて今日は「下」だ。そこにこんなことが書かれていた。

«自殺した生徒の両親の弁護士は「事実でないことにパッと反論できなくても不思議ではないと両親は感じているようだ」と生徒の性格を話す。同じ中学の1年生の男子生徒も「ぬれぎぬであっても、気恥ずかしさで親や友達には相談しづらいと思う」と言う»(毎日新聞2016/3/14)

 まるで、僕が感じた疑問(少年の反応について)に答えているかのようだ。だが前半部分はそのまま聞くしかないが、後半の中1の男子生徒はなぜ登場したのか。様々な友人がいるはずなのに、事もあろうに、どうして同級である中3の生徒ではなく「中1」の男子生徒なのか。ご存知の通り、中1と中3の生活環境適応力や身体・精神の力の差は、年齢差は2年であってもそれよりはるかに大きい。これを書いている記者の何らかの恣意性が感じられる。

緊急報告2        緊急報告1
右側の写真が「下」、3段目の中3の証言者には年齢が表示されているが、4段目の中1の証言者にはない。



 さりげない文章で、うっかりすると「中1」という証人の修飾語を見過ごしてしまう。そして、彼の証言だけが一人歩きする。はっきり言おう。中1の生徒には相談しづらくとも、中3の生徒にはどうなのか。自殺した生徒の仲間たちにとってはどうだったのか。どうして彼らから証言を取り出していないのか。もし取れなかったのなら、どうして取れなかったのか。
 記者が、件の少年の仲間たちと接触していたのは確かだ。なぜなら、自殺した生徒と親しかった同級生の男子生徒(15)にインタビューをしているからだ。彼は次のように言っている。

«推薦がないと公立一発勝負になる。専願を強く求めた彼の気持ちはよく分かる»(同)

 どうして、記者は中1の生徒にした質問をこの親しかったと思われる同級生にしなかったのだろう(注)。「なぜ、Aくんは、担任に前(万引き)があるので学校推薦できないと言われた時、反発ないし抗議をしなかったのか」と。
 いやいや、彼は(または彼女は)絶対にしたはずだ。しないわけがないではないか。ならば、どうして同級生たちの返答を書かなかったのか。記者は完全なドキュメンタリーを装いながらストーリーを作り上げている。もちろん、彼は嘘は書かない。が、証言の取捨選択をする中でストーリー化をしている。引用の記事は次のように続く。

«自殺した生徒は担任に非行歴があると言われた3週間後、夕食の支度をする母に小声で「お母さん、専願がもらえないと学校から言われた」と告げ、目に涙を浮かべたという。翌日、彼は死を選んだ»(同)

 記事はこの後、タイトルでもある推薦基準のばらつきについて述べて閉じる。もちろんこの文章に問題など何もない。ただレトリックに凝っているなという印象を持つ。「夕食の支度をする母親」、「小声」「目に涙を浮かべる生徒」ここに表現されている母と子の姿はまるで民話や妖精物語に登場する虐げられた母子のようではないか。これを描く著者の陶酔感が伝わってくるようだ。
 だが、この物語は僕の疑問に何一つ答えてくれない。子供から「専願」がもらえなくなったと聞いた時の母親の反応・・・これはお涙頂戴の物語ではない・・・母親は、その時何と言ったのか。何と言って慰めたのか、なんと言って子供と共に憤慨したのか。翌日学校に行って、濡れ衣であることを言い、ちゃんと「専願」を取ろう。母親はそう言わなかっただろうか。引用の描写から想像される仲の良い母子なら、こんな風にならないわけがない。これは妖精物語ではない。どうして? どうして? の疑問符は、超自然の中にではなく現実の中に解決を求める。人喰い鬼や残酷な城主など存在しない。一家が結束して直ちに電話等で抗議だってできたはずだ。どうしてしなかったのだろう。かわいそうな少年を救える最後の夜だったのに・・・
 子どもを救えなかった母親に鞭打つことにもなりかねないこの「どうして?」は、やはり新聞という公共メディアでは追求してはいけないのだろう。新聞記事の限界であるのかもしれない。ただ「中1」の証言だけを選択して書く著者のスタイルは少々問題があると言わざるをえない。ちなみに、このコラムは驚いたことに5名という大人数(もっとも5名が大人数かどうかわからないが)の記者の方たちが担当されたと、末尾にあった。

(注)ついでに言うと、中3男子にはカッコ付きで(15)と年齢を示しているのに対し、中1の男子生徒にはそれがない。単なるミスと思うが、これも「中1」という証人の修飾語を目立たせない方策と勘ぐらろうとすればできないことはない。
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雑感 | 14:56:48 | Trackback(0) | Comments(0)
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