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書評『多神教と一神教』について
『多神教と一神教・・・古代地中海世界の宗教ドラマ・・・』本村凌ニ著(岩波新書)

 興味あるタイトルに惹かれて、この新書をひもといてみた。
まず、問題提起の仕方がうまい。あの有名なポンペイの遺跡にある公衆浴場の脱衣所に描かれた春画とも言うべき男女の卑猥な体位図から筆を進め、次になんとそれが後で塗りつぶされた形跡がある、と言うのだ。なぜその卑猥な絵は塗りつぶされたのか。紀元一世紀のポンペイの町に住む人たちにどんな心性の変化があったのだろうか。


 こうして古代地中海人の心性の変化を、古代メソポタミア、エジプト、ギリシャと多神教世界を言語の変化とともに検証していく。そしてヘレニズム期のシンクレテイズム(宗教融合)を経て、アシュタルテ神(シリア)=イシス神(エジプト)=アプロディテ(ギリシャ)=ウェヌス(ローマ)とともにデオニュソス神がいかにローマに定着し、彼等への讃歌がいかに壁画を飾ることになるか、いとも自然に納得させてくれるのである。
 だが著者の眼目はそのことだけではない。というよりそのことはあくまで傍証に過ぎない。多神教から一神教への流れには地中海世界共通の言語表現の基礎であるアルファベットの発明が深く関わっていると言うのである。表意文字から表音文字への推移、難解な言語表現の一種の大衆化、それこそがユダヤ教、キリスト教、イスラム教というかたくなな教義を有する一神教を造り上げていったと言うのである。
 ではどうやって?
 ここで、著者はジュリアン・ジェインズ著『神々の沈黙』という《問題の》書を取り上げる(確かにこの大部の書は読みでがあるばかりか、スリリングな内容でもあります)。この書の中で、かつて人間の心は「命令を下す《神》と呼ばれる部分と、それに従う《人間》と呼ばれる部分に二分されていた」と主張される。例えば『イリアス』に登場するアキレウスは、一方で神の命令に従って行動していたということになる。つまり、人間の心(脳)はニ分心であったが、まさに紀元前千年頃に《神々》の声が聞こえなくなってしまったと言うのである。そして、それは著者の主張する《アルファベットの発明》と時期を同じくする。
神々の沈黙、アルファベットの発明、一神教への道が、同じ地中海世界でしかも同時期なのは、必然というわけである。
 神々の声が全く聞こえなくなった私には、この新書は示唆に富んだ、久々面白い本に思えた。新学期のお薦めの一冊です。
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書評 | 19:17:02 | Trackback(0) | Comments(2)
コメント
こんにちは。
先生がブログを始められたとうかがったので、
早速拝見させていただきました。

ある時神々の声が聞こえなくなった、
という考え方は、おもしろいですね。
地中海文化圏以外にも適用できそうな気がします。
本村先生のご著書、読んでみようと思います。

では、失礼しました。
2006-04-06 木 12:34:04 | URL | Arlequin [編集]
僕のブログ読んでくれてありがとう。『多神教と一神教』の本がアルルカンさんの専門に役立つといいですね(ところで専門はなんでしょう?)。今度は、シャンソン紹介も読んで下さい。ではまた・・・
2006-04-06 木 15:35:27 | URL | Scipion 明生 [編集]
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