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8月15日(火) パリ第一日目
8月15日(火) パリ第一日目

 シャルル・ド・ゴール空港に午後5時頃到着し、そこからいわゆるロワシー・バスでオペラ座横に6時頃到着。
 今回はパリで一泊だけなので、共和国広場の近くに宿を取った。翌日の朝、パリ・リヨン駅からグルノーブルまでTGVに乗るので、オペラ座 --- 共和国広場 --- リヨン駅のつながりが幸便だからだ。20番のバスが通っている。
 と言うわけで、オペラ座からバスに乗り、共和国広場で降りる。そこから徒歩で5・6分のところに予約しておいた「エダ・マレAida Marais」ホテルがある。一泊62.4€と場所の割に安いのであまり期待していなかったが、バスタブ、冷蔵庫付きで思ったよりもよかった。この共和国広場の近くに宿を取ったもう一つの理由は、一昨年無差別テロにあったレストランを見てみようという思いもあったからだ。

翌朝の共和国広場               A la bonne bière
翌朝撮った共和国広場のマリアンヌ像         カフェ「A la bonne bière」




 旅装も解かず、早速共和国広場に出て、そのテロにあった店「A la bonne bière」に向かった。遠目にしか見ていないが、店は夕方の賑わいを見せていて、そのあたりが血で染まる修羅場となったことなど微塵も感じさせない。庶民のたくましさ、といえば簡単だが、近所の人たちも含めて想像を絶するアンチ・テロリスムの感情とそのために生活を変えたくないという凄まじいまでの意地があったのだろう。できたらそこで食事しようと思っていたのだが、長い飛行機旅行の後なので、それだけの食欲がわかない。仕方がないので、そのあたりを散歩して、夕食はケバブ屋で一人前のメルゲーズのセットを買い、宿で食べることにした。ピリッとしたメルゲーズ・ソーセージなら口に入る。

メルゲーズ
これだけの量でわずか6€、パニーニ付きとは驚いた。
食欲のない二人だったのでこれで十分。

 散歩中、フレデリック・ルメートル小広場でフレデリック・ルメートルの像を、それに向かい合って立つジュール・フェリー小広場の「グリゼット」の像を写真に収めた。ルメートルは言うまでもなく19世紀最高の役者で、ハムレットをやらせたら当代一流、あの大ユゴーにも請われて彼の芝居「リュイ・ブラース」「ルクレチア・ボルジア」にも出演している。大革命からナポレオン帝政時代にかけて活躍した役者、崇高なタルマの向こうを張って「ブールヴァールのタルマ」と呼ばれたとか。
 ブールヴァールと言えば、まさにここ共和国広場からバスティーユに向かうブールヴァール・タンプルこそ、かつて犯罪大通りと称され、あの名画『天井桟敷の人々』(ジャック・プレヴェール脚本、マルセル・カルネ監督)の舞台になった大通りだ。粉飾されているとは言え、そこに登場するフレデリック・ルメートルの軽快さは、まさに映画の物語の骨組みとも言える三角関係の恋争い(コロンビーヌを取り合うピエロとアルルカン)のアルルカンにふさわしい。

Lemaître      La Gristte de 1830
フレデリック・ルメートルと道路を挟んでグリゼット

 それに向かい合って立つグリゼットはわざわざ「1830年のグリゼット」とプレートに書かれている通り、まさにそのフレデリックの「餌食」となったかもしれないグリゼット(お針子や洗濯女、ここにいるグリゼットは物売りらしい)だ。この芝居の天才はちょうど1800年生まれ、30歳と言えば男盛りではないか。このグリゼットも19世紀の新たな時代のうねりを感じさせる。バルザック、ユゴー、デュマたち1800年前後に生まれた世代の小説家達に欠かせない登場人物だ。19世紀になるとグリゼット達が徐々に表舞台に現れ初めて、庶民の持つ人生の機微や機知、飾らない感情や欲望を見せてくれる。かの女たちは、裏切られて涙を流したり(『レ・ミゼラブル』のコゼットの母親)、大金持ちの前で啖呵を切ったり(小説『ナナ』のナナ)、愛らしくて皆に可愛がられるが宿痾にさいなまされたり (『ラ・ボエーム』のミミ)しながら、貴族やブルジョワのマダム達とは異質な魅力を振りまくのだ。19世紀も末になれば、ついにはココ・シャネルまで登場するではないか。

Saint Martin運河
サン・マルタン運河

 共和国広場の界隈は19世紀から20世紀にかけての匂いが充満している。ジュール・フェリー小広場の下には、サン・マルタン運河が通っている。今回は行かなかったが、すぐ近くに映画『北ホテル』で有名な北ホテルもある。現在はホテル業はやめて、レストランになっているらしい。サン・マルタン運河を望むこの界隈は、アナクロニスム的に時代を感じさせ味わい深い。20世紀も終わり21世紀となった今、この庶民の街はもちろん庶民の街のままではあるが、人種のるつぼの街となって変貌している。このアマルガムからどんな文化が生まれるのだろう。テロに屈しまいとする意思を梃子にまったく新たな庶民のエネルギーを、かつてのグリゼット達のように見せて欲しい。
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2017年フランス旅行 | 12:02:04 | Trackback(0) | Comments(2)
コメント
散歩
パリ到着の様子が伝わってき、ワクワクしながら
読ませていただきました。
散歩をされながら思い巡らされることは、
さすが高尚だなぁと思いながら・・
これからも楽しみにしております。
2017-09-10 日 18:40:25 | URL | パルファン光 [編集]
パルファンさん、お久しぶりです。
拙文を読んで下さり、ありがとうございます。
共和国広場からバスティーユへ至るブールヴァールと、サン=マルタン大通りを通りサン=ラザールに至るブールヴァール(いわゆるグラン・ブールヴァール)は19世紀小説の舞台になんどもなりました。とても好きな界隈です。
今回の旅行の感想もどれだけ書けるかわかりませんが、少しでもブログに掲載したいと思っています。
では失礼します。いつまでもお元気で。
2017-09-11 月 11:05:53 | URL | Scipion [編集]
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