■プロフィール

石田明生

Author:石田明生
ホームページの方もよろしくお願いします。
文学雑感、旅行記、翻訳などを載せています。

■4travel

スキピオの旅行記(写真付き)もごらんください。

■最近の記事
■カテゴリー
■最近のコメント
■月別アーカイブ

■最近のトラックバック
■リンク
■アクセス解析

■ブロとも申請フォーム
■ブログ内検索

■RSSフィード
大天使の名を持つ歌手・・・ラファエル
9月29日(土)

 フランスで今最も人気のあるシンガー・ソング・ライターのひとり、ラファエルのライブを見られる、実を言うと一週間ほど前から、うきうきしていた。
 バルバラのコンサートにも行ったことがある。それは昭和女子大の人見記念館だった。今度はそんなのではない。というのは、今度の会場は、日仏学院のブラッスリーだ。飲み物一杯付いて2700円、ということは、小さな、手の届くような会場で、超人気歌手の歌を聴けるということだ。
 8時半からライブ開始だ。我々(夫婦)は7時半入場なので10分前にそのブラッスリーに到着した。するともうすでに、チケット売り場から10メートルほどの列ができていた。気の早い人はどうやら我々だけではないらしい。できたらいい場所(席はない)を確保したいのだ。

らふぁえる.JPG



 10分ほど経過して、入場が始まる。行くとすでにピアノ、ギター、マイクの置いてある舞台らしき所に観客が陣取っている。我々は二列目というところか。それでも驚くほど近い。本当にラファエルが目の前のマイクで歌うのだろうか? だいぶ使い込んだのか、ピックの当たる所がはげているギターが主人を待っている。
 赤ワインをちびちび飲み、だんだん高まる喧噪を背に受けて待つこと約一時間、この会場の日本人スタッフ(元気のいいお姉さんタイプ)とフランス人スタッフ(ごっつい、カジモドのような男)が日本語とフランス語で簡単にラファエルの紹介をする。
「なにしろ、フランスでは三ヶ月で150万枚が売れた、云々」
 ふむふむ、2006年の「ソワレ・デ・ザンフォワレ」に登場したときの彼の人気度を知っていたので、我々にとってそれほどの驚異ではない、が、やはり人口の少ないフランスで、しかもこれから紹介するが、かなり地味な彼のキャラクターや歌、歌詞の内容からすると、驚くべきことかもしれない。
 最後にスタッフは「写真撮影と録音は堅く禁じます。違反した場合は退場を願います」と、脅し文句を決めて、楽屋口(単なる通路だった)に引っ込んだ。
 すると入れ違いに、登場したのだ。

伴奏.JPG
伴奏者

 伴奏を担当する大柄のギターリストのうしろから、Tシャツにブレザー、よれよれのジーパン姿に、櫛をろくに入れていないようなくしゃくしゃの髪をした小柄な、色白の少年のままの青年、ラファエルがあっけなく現れたのだ。本当にあっけなく現れた。もったいぶった様子もないし、誰かが、大音声で紹介するわけでもなく、野球場のグランドボーイのようにあっけなく現れたのだ。

 我々観客たち(半分はフランス人か?)は、たぶんそのためにあっけにとられ、微妙なタイミングを失ったのだろう。一斉の割れんばかりの拍手で迎えることができなかった。「キャー」という歓声とざわめきの不協和音で迎えることになった。

ピアノ.JPG
暗くて見にくいが、ピアノを弾くラファエル(拡大するとわかります)

 星の王子様のような童顔のラファエルはまっすぐピアノに向かって腰をかけ、会場のざわめきに備え付けのマイクで話し始める。会場がやっと静まる。
「写真は撮ってかまいませんが、録音は困ります」ラファエルはこんなことを言って、ピアノを弾き始める。突然の撮影許可に会場は一瞬耳を疑ったかのように間が空き、ついでフラッシュがちらほら光り始める。

 聞こえて来る歌声は確かに聞き覚えのあるラファエルの声だった。残念ながら、アルバム『キャラヴァン』に収録された曲ではなかったので、題名はわからなかったが、少し高音の、金属質の声は、彼特有のものだった。

演奏.JPG

 二曲目からは、ギターを抱えて歌った。すると、目の前のマイクに向かって歌ったので、彼の姿は我々夫婦からほんの2メートルほどしか離れていない。まなざしはついに目の前の我々付近をさまようことはなかった。にこりと笑って見つめるのはずっと後ろの方だった。

ラファエル.JPG

 歌い終わるたび恥ずかしそうに「メルシー」と言う。その瞬間に会場から、拍手が起きる。拍手がおさまりきらないうちに次の曲を始める。
 こんなふうにして、13曲をほとんど立て続けに披露した。曲名は一曲を除いて紹介されなかった。その曲は8番目の曲で、Christophe クリストフの「Je l’ai pas touchee (彼女に触れもしなかった・・・仮の訳)」という歌で、もちろん他人の曲だから紹介したのだろう。ちなみに、クリストフは「Les mots bleus (ブルーな言葉)」というヒット曲で有名なシンガー・ソング・ライターだ。

 だから、僕にわかった題名はアルバム『キャラヴァン』の収録曲3曲だけだった。が。そのうちの2曲が彼を大スターにしたものだった(ここで紹介できないもう一曲は10番目に歌われた「シェンゲン Schengen」)。
 アルバムタイトルの「キャラヴァン」は5番目に歌われた。

http://www.youtube.com/watch?v=kmwfuauBvc
(上をクリックすると、「キャラヴァン」を聴くことができます)

♪目に涙がたまるから
♪僕たちの手はもう合わせたままでいられないから
♪僕だってちょっと震えているんだから
♪もう待とうなんて思わないだろうから

♪人は再出発するのでしょうか
♪僕たちは夜に近付いているのでしょうか
♪この世界はめまいをしているのでしょうか
♪いつか人は罰せられるのでしょうか

♪僕は子供のようにはいまわるのでしょうか
♪もうシャツがないんだから
♪そして僕たちを受け入れるのは神様ですね
♪そして僕たちを破壊するのは神様ですね
(以下略)
 と、こんな内容の歌を少しアップテンポのリズムで歌う。

演奏.JPG

 そして、13局目、最後の曲は「Et dans 150 ans (そして150年後)」という曲だ。これもいい曲だ。「ソワレ・デ・ザンフォワレ」で、ジャン=ルイ・オーベールやフィオリによって歌われている。

♪そして150年後
♪こんなこと思い出しもしないだろう
♪君の最初にできたしわのことなど
♪僕たちのまずい選択のことなど
♪僕たちにエールを送る人生のことなど
♪あの武器商人どもなんか一人残らず
♪あの、政府とやらで
♪法律を可決する連中のことなど
♪膨張するこの世界だって
♪叫び声を上げるこの世界だって
♪進み続ける時間も
♪メランコリーだって
♪口づけの熱も
♪流れるようなこの雨も
♪傷ついた恋も
♪僕たちが丸め込まれていることもすべて・・・
♪その時、にこりと笑う
(以下略)

 こんな内容の歌だ。
 最後の曲を歌い終わると、これまたあっけなく退場してしまった。聴衆たちは拍手をし続ける。もう一度彼の顔を見たいし、彼の声を聞きたいから。拍手、拍手、拍手・・・
 だが、登場したのは、さっきの元気のいいお姉さんだった。「アンコールはありません」と、つれない返事。
 確かにそんな予感がした。何だかふっと切れたような、もう一生会えないような(オーバーだが)、ラファエルという人のキャラクターのせいだろうか、何だか彼の持つ、人との関係性がいやに細い気がするのだ。アンコールの拍手が足りないからではない。カーテンコールでなんどもなんども登場する、感激屋の歌手と異質な存在のような気がする。こう思わせるのは彼の織り出す詩の内容からだろうか。まさに、星の王子様がゆらりと倒れて、飛行士のもとを去るように、彼はさらりと去って行った。
 アルバム『キャラヴァン』の小冊子の写真には彼が仲間と楽しそうに仕事をしている場面が写っている。もちろん仲間内では別なのかもしれない。
 そのせいかどうか知らないが、スピーカーから「でも、皆さんにラファエルさんから、プレゼントが期待できるかも知れません。CDを買って下さった方にサインをするそうです」という声がもれ出ていた。

表紙.JPG
アルバム『キャラヴァン』のジャケット

 この言葉の中には、曖昧さが隠されていた。つまり、ラファエルがサインをすると断定していないのだ。おそらく、見えない所でスタッフたちはこのあっけらかんとした歌手を必死になってサインするよう説得しているにちがいない。
 僕は「しない」にかけて、というのも「10分ほどお待ち下さい」という声が続いてスピーカーから聞こえてきたからだが、結果を待たずして外に出てしまった。売っているCDは僕のと同じだから、いてもしかたがない。
 大天使ラファエルの名前を持つ歌手、ラファエル。この名はミシェル・トゥルニエによれば最も軽やかで最もメロディアスな響きなのだそうだ(『七つの物語』)。
 また、カルラ・ブルーニは「ラファエル」を次のように歌っている(彼女の夫もラファエルという名だ)。

♪四つの子音と三つの母音、それがラファエルの名(略)
♪ラファエルの名の中で私を魅了するのはトレマ
♪トレマはaとeを繋げるから、トレマはaとeをlに混ぜ合わせるから(略)
♪ラファエルは天使のようだ、けど本当は愛の悪魔(略)

 悪魔というよりは、飾り気のない巷の王子、彼が路上で物乞いをしていても何の不思議もない(実際、「貧乏人のバラード」という歌の中で物乞いを歌っている。後出)。彼の天使のような美しい笑みがコインを投げる道行く人を勇気づけるかもしれない。そんなキャラクターの彼がますます気に入った。
 できたら、サインなんかしなければいいのにと思い、次に、CDを買わなかった人にもサインをしてしまえばいいのに、とも思う。発売元の東芝としてはそれでは困るだろうが。

観客.JPG
ライブ終了直後の会場内


♪俺は毎朝そこの
♪路上でこんな風に
♪行ったり来たりする日を見ている
♪手を差し出しながら

♪橋の下で俺は暮らしてる
♪きっと家が好きじゃないんだ
♪マイライフなんておさらばしてしまった
♪ずっと前に
♪多分夏のある日に
(略・・・「貧乏人のバラード」より)
スポンサーサイト
ポップ・フランセ | 17:55:16 | Trackback(0) | Comments(2)
コメント
初めて書きます。
去年LLに出ていました☆今年9月からLyonにいます。

ラファエルのライブが行われることは知っていたのですが、
そのライブ、実際に行かれたのですね!!!
今更ながら最近、彼に夢中なので、ものすごく羨ましいです。
狭い会場、そして撮影OKだったなんて…v-405
日本にいたなら絶対に行ったのに~!と思うばかりです。。。
2007-10-04 木 07:48:44 | URL | sora [編集]
sora さん、おはよう(今日本は朝です)。昨日、大学へ行って来ました。授業前に、LLのみんなに、ラファエルのライブ話をしました(僕の得意そうな顔を想像して下さい)。そして、君の許可なしに、Lyonに滞在しているラファエルファンのメッセージのことを話してしまいました。すみません。つまり、フランスにいる人はラファエルを身近に見られないのに、日本では見られた、というような・・・
sora(実は本名も承知していますが)さん、フランス滞在を楽しんで下さい。
また、ひまな時にはここに遊びに来てください。
A bientot!
2007-10-05 金 09:23:42 | URL | スキピオ [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad